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隣で茅野さんが漸くというように眠ってくれた
私なんかので申し訳ないけど上着を掛けてあげると、強張っていた表情を少しだけを緩ませた
_コンコン
みんなの寝息をBGMにしていると、本当に小さくドアが叩かれる音が耳に入る
爪で叩くような、そんな音
『……』
そんなこと出来るのは1人だけ
…先生も、ちゃんと休んだ方が良いのに
茅野さんを起こさないように立ち上がってドアの方に行けば
予想通り先生がドアの向こう側に居た
音を立てないように外に出ると、この数日でもう慣れた肌寒さを感じる
すると急に布が掛かる感覚がした
見てみるとコートが肩から掛かっていた
…男性ってだけあって、やっぱり大きいな
引き摺りそうで怖い
『…先生が使って下さい』
「それ、そんな着ないから大丈夫。
それにどうせ戻るし」
『…先生、寝て下さいよ』
「少しだけ、話してからな」
そう言って先生は歩き出す
それは無言で「来い」と言われてるも同然で、断れるわけがないから後ろを歩く
一体、この道を何回往復すれば良いんだろう
一番最初の頃から考えると、相当な回数だと思う
1日で往復する回数が人質になる前よりも断然多い気はしている
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美術室とは違い、準備室に入ると温かい
コートも不必要になったから脱いで、一応畳んで持っておく
「水、飲む?」
『いえ、大丈夫です』
なんか、先生と居ると何かが消えて少しだけ穏やかな感じが流れる
この感じ
景山と居たときと一緒だ
その理由は、まぁ分かる
「お前さ、茅野に嘘吐いたろ」
『……いえ、そんなことないですよ』
カップに口を付けながら唐突に先生が斬り込んでくる
目も顔もこっちを向いていない
でも直感的に分かる
先生は、それも嘘だということを理解している
「よし、横になりながら話そうか」
『…はい?』
「寝落ちするまでってやつだよ。
それにその方が互いにリラックス出来るだろ?
あ、コートはその辺に置いといて」
そう言うなり、先生はベッドに潜り込んで横になった
そして1人分のスペースを横に作って、そこをポンポンと叩く
「寝れなくても良い。俺の抱き枕代わりになってくれ」
『…失礼します』
そう言われたら入るしかない
空いたスペースに横になれば腕が回り、緩く抱き締められる
これは逃げられないやつだ
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もちもち(プロフ) - ユイさん» そう言っていただけると、とても励みになります。ありがとうございます!これからも精進していきますので、よろしくお願いします。 (2019年4月14日 21時) (レス) id: 31f6343f7f (このIDを非表示/違反報告)
ユイ(プロフ) - 一気読みさせてもらいました!言葉の選び方とか全て含めて読みやすいし面白いです! (2019年4月11日 22時) (レス) id: 40031fd2e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もちもち | 作成日時:2019年4月8日 23時