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薬を飲む前に胃に何か入れろと言われても、お腹なんて空いてない


むしろ今の状況で食べたら吐きそうで怖いから首を振る





「少しでも良いから食え。じゃないと薬飲めない」



『…大丈夫です』





そう言うと先生はまた手を伸ばしてくる。

だから私もまたそれを防ごうとするけど、その前に手を片手で拘束された



そして先生の手は躊躇することなく前髪を避けて額に触れる





いつも私より温かいはずの先生の手が冷たく感じる


思わずその冷たさに目を細めた





「もっと早く言ってくれれば良かったのに…」





ボソッと何か言っていたけど、やっぱり聞こえなかった


先生はゆっくりと額から手を離して、持ってきたパンの袋を開け、一口サイズに千切った


そして、小さくしたそれを私の口元に持ってきた






…食べる気になれない


この何日か、ずっとお腹が空かない



それにあんな夢を見たからか、気持ちは落ちる一方で、それに比例して無いはずの食欲は失せるばかりだった





「…食べて」





泣きそうに震える声が鼓膜を揺らした


少しぼやけた視界で先生を見ると、先生は辛そうな顔をする





何で先生がそんな顔をするのかは分からない、

でも私のせいってことは分かる。




そうだよ、こんなのただのワガママじゃんか


何迷惑掛けてるんだ






小さく口を開くと、先生はそこに千切ったパンを押し込むように入れた



味の無いガムを噛んでる気分になる


でもそれを咀嚼して飲み込めば、優しく頭を撫でられた




…こんなことで褒めてくれるのか


何かが込み上げてきそうだったけど何とか堪えて、同じことを2回繰り返した




その後に渡されたのは水と薬


もうここまで来たら隠すもクソも無い




受け取ったものを流し込めば、再び頭を撫でられる


今メンタルが弱ってるから切実にやめて欲しいけど、口に出来る訳もないからそれが離れるまで黙ってそれを受ける





「寝れなくても良いから今日は横になっとけ」



『…教室戻るので大丈夫です』



「ダメだ」





そう言われて不意に体が浮いた

脚と背中に腕が回って、先生の顔が近い


横抱きをされていた



先生の体に負担が掛かるから降ろして欲しいと頼んでも、先生は聞く耳を持たず


降ろしてくれたのはベッドの上だった





「おやすみ」





そう言って先生は私の額にキスを落としてモニター前に戻った



寝れないと分かってるのに言ってくれる優しさが胸に沁みた







・〜柊side〜→←・



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作者名:もちもち | 作成日時:2019年3月28日 0時

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