【3年A組】杭は出なきゃ打たれないはず 2【今から皆さんは人質です】 (ページ46)

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再び美術室に来てドアを閉めた途端、先生は私の手首を掴んで準備室に入った

それに抗うなんてことはせずに、腕を引かれたまま歩く

平衡感覚がしっかりしてないから転びそうになるけど頑張って足を動かした

準備室に入ると先生は足を止めて私を椅子に座らせ、下から顔を覗いてくる

『あ、先生が座った方が…』

「良いから」

慌てて立つものの、肩を軽く押されてしまって椅子に逆戻り

粘っても無理そうだから有り難く座らせてもらい、覗いてくる先生の顔を眺める

改めて見ると、先生って綺麗な顔してるなぁ

昨日の傷は治ってきてるし薄くなってきていて、明日にはもうほぼ治るんじゃないかな

あーでも視界が少しぼやけるな

それに寒気も増してきた気がする

「顔色最悪だな…」

『…え？』

何て言ったのか分からなかったから、思わず聞き返してしまった

すると今度は先生がこちらに手を伸ばす

あ、ダメだ

そう思って伸ばされてきた先生の手を掴んで止めた

「……」

『……』

すると先生は無言で眉を寄せる

…手、掴んだのが不服だったのかもしれない

そう思って手を離してみようとすると、優しく包まれた

その行動を不思議に思っていると、今度は心配そうな顔をした先生と目が合った気がした

「寒い？」

『…いえ』

「じゃあ暑い？」

『暑くも、ありません』

「…そう言う割には手は熱いし、震えてる」

その言葉はしっかりと耳に入ってきて、何て言おうか詰まってしまった

…手を掴んだのが間違いだった

自分で震えてるとか自覚ないからよく分からない

でもその手を包んでる先生が言ってるんだから、きっとそうなんだろう

『…大丈夫です。問題ありません』

「何処がだよ。

薬持ってくるから、待ってて」

『いや、本当に大丈夫で…』

「待ってて」

再度言われてしまい、それ以上は言えなかった

先生は立ち上がって薬を取りに行く

…迷惑掛けちゃったな、色々と

そんなんだから、あんなことになるんだよ。学習しないな

ほら、思考が下に向きがちになる

こんな自由な日に限って…厄日なのかもしれない

それに自由と言ったって人質になってることには変わりないから…

「お待たせ」

『あ、…』

戻ってきた先生の手には薬の他にパンがあった

それは多分、みんなも配られるであろう朝食だった

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