【3年A組】杭は出なきゃ打たれないはず 2【今から皆さんは人質です】 (ページ42)

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・～柊side～ページ42

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あぁ、そういえば

Aの父親が借金をしていたなんて知らなかったったな
調べて分からない訳じゃ無いのに…

やっぱり、資料は違うのか

話し終わってゆっくり立ち上がったAを見ながらそんなことを思っていると、視線に気付いてAもこちらを見る

『…話、聞いてくれてありがとうございました。時間を割いてしまって、すみません』

でもお陰で気が楽になった。

そう言う割にはAの表情は晴れているとは言い難いもので

目の前に持ってきていた椅子を片付けようとするAの手を咄嗟に掴んだ

掴まれた本人は、えぇー…と言って本気で困ったように俺の手をじっと見る

「…一緒に寝よう」

『え、今日もですか』

何故か曇った表情のAを見るのが少し怖くて引き止めたけど、言うことを考えてなかった

だから少し考えてからそんなことを言った

まぁ本心だから別に問題ないだろう

「何だよ、不満か？」

『いや、不満ってことじゃないんですけど…
私一人だけベッドの上で寝てるとかズルくないですか？』

「…今更だな」

『今まで私の意思でここに寝てる訳じゃないんですけどね。

それに、眠くないですし』

眠くないと言ったAは本当に目がぱっちり開いていて、嘘じゃない事が分かる

一回、Aが飲んでいる薬を確かめるために水に溶かしたことがある

するとその薬は水に溶けると青くなって、思ってた通り睡眠薬だった

五十嵐さんにも調べてもらったけど、強力なやつっていうことが判明した

そんなものを飲んでいるのに、ここまで効果が出ないってどういうことだよ

飲み続けて免疫が出てしまったのか…

だとしたら相当な量が必要になる

そんなことを考えると、どうしてもAを一人にしたくなくて、掴んだ手に力が籠るのが自分でも分かった

するとAは俺の手と顔を交互に見て、何か察したように口を開く

『…じゃあ、先生が良かったらで良いんですけど、
眠くなるまでここで絵を描いてても良いですか？』

それは俺を気遣って言ってくれたものだと分かった

普段ならあんまり何がしたいとか言わないくせにあくまでも自分がやりたいからって言い方で

それでいて俺の事を心配するようだった

その大き過ぎる優しさに思わず泣きそうになるけど、グッと堪えて頷く

そしたらAはぎこちなく手を伸ばしては俺の頭を優しく撫でて、準備をしに行った

…泣きそうだ

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