【3年A組】杭は出なきゃ打たれないはず 2【今から皆さんは人質です】 (ページ31)

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「澪奈があんなことになって、私は生きた心地がしなくて…
ずっと時が止まったままだった。

もし先生が澪奈のことに触れてくれなかったら、一生引き摺ってたと思う。

ずっと澪奈に対して…」

「澪奈、澪奈、澪奈！
…何でみんなあいつにこだわるの？」

茅野さんの言葉を遮って諏訪さんは強く叫ぶように言った

「…私はあの女が嫌いだった。

やりたいことに真っ直ぐで、ブレずに生きてて…

目障りだった」

「…諏訪さんもブレてないように見えるけど。

世界のファッションショーに出るようなモデルになるって…

ごめん。前に喋ってるの聞こえちゃって…」

そういえば、諏訪さんってモデルやってたんだっけ

大きな夢を持ってるんだなぁ

茅野さんが言ったことを聞いて、諏訪さんは少し俯き気味で表情を曇らせる

「…分かんない。
そもそも本当に叶えたかったのか、もうよく分かんない…

色んなもの犠牲にして、失って、もう後戻り出来なくなって…

だから前に進むしかなくて…！

何であんたにこんな話…」

自嘲気味に軽く笑って、諏訪さんはバッグを持って教室を出て行った

前に進めるだけでも凄いっていうのに、何をそんなに迷うことがあるんだろう

…いや、これが普通の悩みなのかもしれない

夢を追いかける人が持つ、一般的な悩み…

「戻っても良いんじゃないかな！

…無理して進む必要ないと思う」

茅野さんが立ち上がって諏訪さんの背中に話しかける

…私も気の利くことが言えたら良かったんだけど、

茅野さんに任せた方が良さそうだ

「そうだ！新日の棚橋と柴田の泣ける話があるんだけど…聞く？」

「聞かない」

「…うん」

自信あるように自慢気に持ち掛けた話をバッサリと斬られて、その背中は何処か残念そうだった

…これかな、景山が言ってた茅野さんのプロレス話

“＿その子ね、プロレスが大好きみたいで、話し出したらなかなか終わらないんだよ～！＿”

なんて言いながら嬉しそうな顔してたけどね

「あ、Aちゃんも聞く？」

『うーん、あんまり分からないからなぁ…

ごめんね？』

「あ、いや、良いの良いの」

それで会話が途切れた

教室内に響くのは時計の秒針の音

でもなんだか心地悪くはなかった

「…んっ……」

『…先生』

そんなとき先生が小さく声を漏らす

そして瞼がゆっくりと上がり、思わず顔を覗き込んだ

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