【3年A組】杭は出なきゃ打たれないはず 2【今から皆さんは人質です】 (ページ29)

今日:6 hit、昨日:24 hit、合計:446,151 hit

・～茅野side～ページ29

・

先生を受け止めたAちゃんが自分の上着を脱いで枕代わりにし、

先生が脱いだ上着を先生に掛けた

それから口元に手をやって呼吸確認みたいなことをしていて

なんだか、凄く冷静に見えた

こんな状況なのに、薄っすらと口角を上げていて

でも、その口角は何処か引きつっていた

「Aちゃん…

私、何か出来ることある？」

『…先生、凄く動いたし、こんな状態だから体温上がってるの。

迷惑じゃなければで良いんだけどね、その…』

「うん、分かった」

言葉を探って選びながら、遠慮がちに言ってくれた

言いたいことが分かったからハンカチを濡らして持ってくる

そして先生の前髪を避けて額の上に乗せると、ごめんね。と申し訳なさそうに笑った

多分、私が動くことか、私のハンカチが濡れることに遠慮してくれたのかもしれない

言葉も言い方も配慮もあまりに優しくて

何処か危うげだった

それに、Aちゃんもため口で喋ってくれていることに気が付いて少し嬉しかったし

話すとこんな子なんだと分かった

そんなAちゃんは、私のとはまた別のハンカチを取り出して先生の汗や傷を軽く拭く

そのとき気付いてしまった

Aちゃんの手が震えていて

冷静に対応しているのに、肩で息をしていた

「…先生、ずっと具合悪かったのかな？」

「そんな素振りは見せてなかったけど…

ねぇ、アンタは気付いてたんでしょ？」

「…どっちにしろ、こいつはもうこれで終わりだ」

甲斐くんもだろうけど、きっとAちゃんも知っていたと思う

一瞬だけ、顔を歪ませていたのが分かった

＿ヴー

そんなとき、先生の上着から音が聞こえた

「あ、先生の携帯…」

『…私が、取るよ』

パシッと手首を掴まれて、反対の手でAちゃんが携帯を取り出した

その画面には “I” という文字

それを見て分かったのか、Aちゃんは応答ボタンを押した

そして話を聞いてるのか耳を当ててから暫くして喋り出した

『…お久しぶりです。
先生、倒れたので代わりに…

まぁ、ある程度のことは……はい、

大丈夫です…はい、では』

おそらく生徒以外の協力者であろう人物と普通に会話しているのに驚きを隠せずにいた

「みんな、準備室が開いたよ！」

そんな声が聞こえて、みんなそっちに行った

残ったのは私とAちゃんだけだった

「完全に乗り遅れた…」

・