detective WEST Ⅱ (ページ22)

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緑「ごめっ、のんちゃ、」

桃「気にせんで。大丈夫やから、ゆっくり呼吸してな」

神ちゃんをホテルの部屋のベッドに下ろし、背中を擦りながら声を掛ける。
しばらく落ち着かせようと色々試みるも、神ちゃんの呼吸は相変わらず荒いまま。
自分に何が出来るのか。いざ発作を起こした神ちゃんを前にして自分の無力さを嫌というほど実感する。

緑「……し、げ」

震える身体を自分自身で抱きしめるように小さくなりながら、神ちゃんがシゲの名前を呼ぶ。
ふと、シゲが何かあれば必ずすぐに連絡するよう口酸っぱく言ってたことを思い出す。

桃「神ちゃん、シゲに電話するで？」

断りを入れてから電話をかけると、まるで待機していたかのようにすぐに応答するシゲ。

桃「シゲ、神ちゃんが、」

赤『発作か？』

桃「うん」

赤『小瀧、神ちゃんはお前の感情にも敏感になってる。落ち着いて、絶対大丈夫やから』

シゲの指摘にハッとする。
神ちゃんは普段、人がどんな感情を抱えているか常にぼんやりと感じ取っているらしいが、思考や細かい心の声は意識を集中させないと聞こえない。
でも発作中の神ちゃんは、感情を読み取る相手をコントロールすることが出来ず、近くにいる人の心の声が全て脳内まで届いてしまうらしい。

つまり、俺の焦りや無力感は全て神ちゃんに伝わってしまっていたということ。それがきっと、神ちゃんの発作をさらに悪化させていた。

電話越しのシゲの力強い大丈夫という言葉に、ひとつ深呼吸をする。

赤『小瀧、神ちゃんに代わって』

桃「神ちゃん、シゲやで」

震える掌に、そっとスマホを握らせる。