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あたし 笑顔 賞味期限2秒2 ページ9
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彼は歩いて科学館から歩いて数分のところにあるファミリーレストランに連れて行ってくれた。お洒落なカフェじゃなくて申し訳ないな〜と彼は笑う。
彼と向かい側の席に着いてやっと、私はあることに気づく。
そういえば、私、彼の名前を知らない。
私は名前も知らない人と小一時間共にいたのか。
そしていっしょにファミレスに来てるのか。
まぁ、でも私は口数が少ない方だから彼がずっと一方的喋っていたと言った方が正しい。
その彼はと言うと席に着いてからメニュー表とにらめっこをしてる。……ええい、聞くなら今だ！
｢あっ、あのっ｣
思ったより大きな声が出た。
彼も少し驚いてメニュー表から目線を外し私を見る。
｢名前聞いても……？｣
｢え、あ〜…。｣
彼は気まずそうに俯く。なんだ、名前は聞くのはまずかったのか。けれど知らないのもなんだか失礼な気がする。正しい判断をしたと無理やり自分に言い聞かせる。
しばらくの沈黙の後に彼は顔を上げ、口を開く。
｢ほりうち …りく｣
｢ほりうち りくくん…？｣
コク、と彼は頷く。
｢君は？｣
そう聞かれたので私はしっかり、聞こえるように、
｢A Aです｣
｢A Aさん｣
｢ほりうちくん｣
｢Aさん？｣
何故か意味もなく繰り返し合って、それがなんだか可笑しくなったのか彼がぷはっと吹き出す。
はたから見たらバカップルだ。
私たちはやっとここで、お互いの名を知った。
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作者名：いろは | 作成日時：2019年4月22日 15時
