超えるには近すぎる (ページ48)

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48話ページ48

「おじゃまします･･･」

何となく、日本語でそう言いながら中に入れてもらう。中に入れてくれたから、多分怒ってはないと思う･･･。

この間ぶりに入った彼女の部屋は、香水ともちがう、まさにAちゃんの香りでいっぱいだった。

いつも同じ香りのする彼女に、「何の香水つけてるの？」と聞いたことがある。その時Aちゃんは、「何もつけてないよ～」って笑ってた。

甘くて、眠たくなるような赤ちゃんみたいな香り。不快感がまったくない、癒される匂い。

部屋中がその香りで、Aちゃん自身の香りなんだなって考えたら、どうしても変な気分になってしまった。

「ジミナ、もしかして私が電話かけたから、来てくれたの？」

「あ、う、ん･･･。」

いきなり垂直に聞かれて、動揺する。あの後電話をかけてもカトクを送っても反応してくれなかったAちゃんは、今どんな気持ちで質問してるんだろう。

やっぱり怒ってる？Aちゃんの顔を見ることが出来なかった。

「ごめんね」

申し訳なさそうな声に思わず顔を上げる。Aちゃんの手には僕のスマホが握られていた。

「え、え？？」

ごめんね、にも、僕のスマホを持っていることにも混乱して、言葉が出てこない。

「あのね、私のスマホかなり寿命きてて、今日買え変えようと思ってたから連絡が夜まで出来ないって言おうと思って電話したの。でも電話すら出来ないくらい寿命来てたみたいで、電源落ちちゃって･･･」

スーッと不安が消えていく。よかった、怒ってたわけじゃなかった。でも、そのかわいい服は？テヒョナは？知りたいことはまだある。

「そんな可愛い服きて、誰と行ったの？」

少し、トゲのある言い方をしてしまった気がする。けど、そんなことを気にしてられるほど余裕はなかった。

「えっと、お友達のユナと･･･おしゃれさんだから、私も気合い入れちゃった」

へへっと笑うAちゃんに、こんなに嫉妬してる自分が恥ずかしくなってきた。でも仕方ない。好きだもん。

「じゃあテヒョナとの電話は？」

これが一番聞きたかったやつ。確かにテヒョナはさっき「Aちゃん」って言ってた。

テヒョナ、と口にした途端、Aちゃんは慌てた顔をした。
なんで？もしかしてテヒョナと･･･
不安になっていると、Aちゃんの方が不安そうな顔をして

「ひ、引かないでね？」と言った。