超えるには近すぎる (ページ44)

今日:9 hit、昨日:2 hit、合計:254,065 hit

44話ページ44

宿舎のドアをゆっくり開ける。

結構遅くなっちゃったな。

みんな寝てるだろうと思ったけど、リビングのドアだけ薄暗く光っていた。

ドアを開けると、テヒョナがソファーのクッションを抱きしめながら寝ていた。

「テヒョナ、風邪ひく･･･」

起こしてベットに行かせようと思ったけど、テヒョナの顔を見たらできなかった。

涙の跡が、くっきりと残っていた。

テヒョナが握り締めていたスマホには、去年撮ったであろう隠し撮りのAちゃんとツーショットのテヒョナが写っていた。

写真のテヒョナは嬉しそうに笑っている。

テヒョナ。

テヒョナ。

こんなにAちゃんのこと好きなのに、僕の背中を押してくれたの？

ごめん。

ごめん。

「･･･っありがとう、テヒョン」

ぽたぽたとカーペットに涙が染み込んでいく。

毛布を持ってきてテヒョナの隣で寝ようと立ち上がると、ガシッと手を掴まれた。

「･･･テヒョナ？」

ゆっくり振り向くと、テヒョナが眠そうな顔で
「パボジミナ」と呟いた。

「なに、泣いてんの。そんなんでAちゃん守れるのかよ」

冗談交じりに笑いながらそう言うと、1度目を閉じた。

「･･･あたりまえ、あんなに大切にされてる子、守る以外選択肢ないだろ？」

泣きそうなのを堪えてそういうと、テヒョナは満足そうに「･･･ん。」と頷いた。

「おめでとう、ジミナ」

テヒョナの目からは、一筋の綺麗な涙が零れた。