超えるには近すぎる (ページ32)

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32話ページ32

今日は、シャンプーのCMの恋愛ミニドラマの撮影だった。

アイドルのソナちゃんと、仲良しなカップルを演じる。

役だとわかっていても、Aちゃんに見られると思うと、複雑な気持ちになった。

寒い中、外で撮影が始まる。

『オッパ、私、ソウルから離れた田舎に行かなくちゃいけないの･･･』

ソナちゃんが俯く。

「じゃあ、君と離れ離れにならなきゃいけないの？･･･そんなの、やだよ」

僕はぎゅっとソナちゃんの手を握る。Aちゃんに見られていると思うと、気が気じゃなかった。

『オッパ･･･お願い、最後に抱きしめて？』

ソナちゃんが僕に寄り添う。

ちょっと待って！？こんなシーン台本になかったよね！？

アドリブで入れたのだろうけど、カメラのストップがかかる様子はない。

このまま続けろってことか･･･。

僕はソナちゃんの肩をそっと掴んだ。

そして･･･

ぐいっと僕との距離を離した。

『え。』

ソナちゃんも、スタッフさんも多分、驚いた顔をしていると思う。
みんなの視線を集める中、僕は演技を続けた。

「だめだよ。最後なんて言わないで？必ず会いに行くから。･･･사랑해」

そういってソナちゃんの目線まで腰を下げて、髪を撫でた。

一瞬の静寂の後、カットの声がかかった。

わっと拍手が起きて、監督が「素晴らしかったよ！いきなりのソナちゃんのアドリブにどうするかと思ったけど･･･予想の上を演技、思わず見とれてしまったよ」

多くの人に褒められて、少し照れくさくて周りを見ると、不満気なソナちゃんと目が合った。

少し、申し訳なくなった。