7話 ページ7
.
やらかした。
昨日のようにいつもの喫煙所に来たが、ライターを忘れたことに気がつく。そこまではいい。そこまではいいんだけど…
ザーッ____
晴れていたはずなのに急に降り始めた時雨。外に出られない。煙草を吸わずに喫煙所に居座る人間になってしまった。私以外に人が居なかった事が唯一の救いだ。
「うう、ピーカンくんは何処へ」
「…ピーカンくん、て」
「?!」
笑いを堪える声が背後から聞こえる。驚いた勢いで振り返ると、水の滴る傘とショートピースの箱を片手に持った昨日の彼が立っていた。ピーカンくんとかいう謎ワードを聞かれてしまった恥ずかしさに口が早くなる。
「これは〜その、ライター忘れちゃって…取りに戻ろうと思ったらこの雨、って感じですね…」
「それで "ピーカンくん" っすか」
あ、笑った。
昨日見ることの出来なかった表情に、少しだけ鼓動が早くなる。
余程ピーカンくんがツボだったのか、ショッピくんは未だに笑いながらこちらにライターを差し出す。
「火くらい貸しますよ、どうぞ」
「あっ、どうも……」
カチカチと響くライターの音。外からはその音をかき消す程の雨音が聞こえてくる。止むのかなあ、雨。
やっとの思いで煙草を吸い始めると、昨日1番気になっていたことを思い出す。
「「あの」」
「「あ、」」
見事に声が被る。
「お先にどうぞ」
会話が進まないことを察知した私は、先に発言権を譲った。
「大したことじゃないんすけど、昨日名前聞き忘れてたなって…」
自分と全く同じ質問に耳を疑った。
「えっ、あ、私もショッピくんと同じ質問です」
焦り過ぎたからか、自分が勝手に付けた「ショッピくん」のあだ名が口から漏れる。ピーカンくんといい、今日は恥ずかしいことの連続だ。
「"ショッピくん"…?」
「……昨日、ショートピース吸ってたから勝手にあだ名付けてました」
あっ私はAと申します…と、小声で付言する。
ショッピくんは数秒ぽかーんとこちらを見つめた後、口を開く。
「ショッピくんってそのまま呼んでもらって大丈夫っすよ。友人にもそうやって呼ばれてるんで、そっちのが落ち着きます」
ショッピくん。うん、やっぱりしっくりくる。A的声に出して言いたい単語ランキング1位だ。
「じゃあ…よろしくお願いします、"ショッピくん"」
"ショッピくん"を強調して話す。
外の雨は、気がつく頃には止んでいた。
382人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
オレオ - うぅ……続きが気になるんじゃぁ…… (2020年3月15日 6時) (レス) id: 1e92aa4807 (このIDを非表示/違反報告)
@ぴお - ごめんなさい。ピーカンがピーマンに見えました((殴 (2020年2月29日 18時) (レス) id: d14a9375c7 (このIDを非表示/違反報告)
まきす(プロフ) - 雰囲気すごく好きだしこの先どうなるか気になります…。応援してます。頑張ってください!! (2020年1月28日 0時) (レス) id: ffb43308bb (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑 - うわ〜予想外の所で正体が!続きが凄く気になります、、更新頑張ってください! (2020年1月27日 20時) (レス) id: 60683cdb14 (このIDを非表示/違反報告)
ひこばえ(プロフ) - かなさん» ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです;;;マイペースになるかと思いますが更新頑張ります…!! (2020年1月26日 15時) (レス) id: 5cb8a216c2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ひこばえ | 作成日時:2020年1月25日 18時