1話 ページ2
「ちょっと、マジで言ってる？」
「マジもマジ。おおマジだぜ？
お前出席ちょろまかしてる身分で、
そんなこと言えんのかよ？」
「それは嶺二さんの親切で、
兄ぃのじゃない！」
……皆様おはつお目にかかります。
お見苦しいところをお見せして、
申し訳ありません。
私の名前は、伊吹 初、と申します。
こっちでぶつくさ言っているのは、
立場上兄、標 出雲。
「だいたい、
どうして私が嶺二さんの奥さんの空き家に、
すまなくちゃいけないことになってる？」
どうやら兄ぃは、
というか嶺二さんも、は、
嶺二さんの奥さん…故人なんだけど、
の、お母さんの家？
ややこしいんだけれど、
簡潔に言うと私と血の繋がりのない家に、
住んで欲しいって言ってるわけ。
「兄ぃが住めばいいんじゃないの？」
「そりゃ俺が住んだっていいけどよ。
……あの家から大学遠いんだよなぁ……」
「それが妹(仮)に対する仕打ちなわけ？！」
お聞きの通り、
家に住まなきゃ行けないが、
我らが一家総出て今通っている、
壱橋大学までは
この実家の方が近くて便利、
ということらしかった。
「大体。
その家、どこにあるの？」
「あー、えーと？
この書類に書いてんじゃねーか？」
ぽい、と茶封筒が投げ渡される。
中を開いてみると、
それはそれは立派な豪邸だった。
「本気でここ？
ドッキリとか仕掛けてきてる？」
思わず疑ってしまう。
兄ぃは何言ってんだかなぁこいつ、
という目で私を見たあと、
アメリカ人みたいに顔横で掌を上に向けた。
……無視で良いか。
サッと目を通して住所のところに目を向けてみる。
「えーと？
米花町の……米花町？！」
「あーそーだそーだ。
そんな名前だったよ、確か。」
「兄ぃ。住んでやってもいい。
その代わり、授業のちょろまかし、
いつもより多めでよろしくって嶺二さんに！！」
私は頭に思い浮かんだ彼らの顔を
しっかりと胸にきざんで、
そのまま荷物の準備を始めた。
……今度こそ、絶対楽しんで生きると、
心に決めて。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時：2019年2月17日 22時
