参拾頁─濁ッタ人生 4─ ページ37
Aは素直な自分を彼に伝える。
答えるまで決して離さないと主張してくる彼の瞳に、偽りで語るのは面倒で気が引けた。
しかし出会って数日の少年に馬鹿正直に真実を話すほど彼女も善人ではない。
背中を後ろに隣へ座りこみ、目で佇まいを正せと催促する。
重く動きづらい躰を持ち上げたのを見届け、そして小さく口を開いた。
『何度も死のうと思ったよ。でもそれをあの子は許してくれなかった。何度もあの子に救われた。私は根負けして諦めただけで、生きようと思って今を生きているわけじゃない』
「...それでよく生きていられますね。僕は今すぐにでもこの退屈な世界から逃げ出したい」
『自ら生に価値を見出さなければ世界なんて退屈だよね。誰もがそう思っている。だから大抵の人間は生き甲斐というものを作るんだよ。それは食事でも恋人でも趣味でも何でも善い。例えそれが楽しいと思えないものでも構わない』
遠くで一際大きな破壊音が聞こえた。
太宰が無言の溜息と共に退屈そうに目を伏せる。
彼女ならば自分には辿り着けなかった何かを知っていると思っていた。
しかしその返答は既に誰かから投げられたものと然程大差のないものだった。
「(今日は疲れているから自 殺が成功しそうだ...結局この世界は......)」
『ところで、君は粗方何でも容易くこなすらしいね。躓きの無い人生ほどつまらないものはない。かと云って、私の立場上今は君に自由な時間をあまり与えられない。だから植物図鑑を貸すことにする』
「...植物図鑑?」
突然出てきたその単語に太宰は目をぱちくりとさせる。
いや、厳密には生き甲斐を作るという脈略があるにはあったが。
意味が判らないといった様子の彼にAは向き直り、人差し指を彼の眉間に当てる。
『毎日十頁ずつ読むこと。次の日に覚えているかテストする。これなら知識を蓄えつつ任務も円滑に行える。そして何より話し相手が出来て面白い』
「そういう流れですか。前者には賛成ですが、後者は個人の偏見が混ざっているように────」
云って直ぐさま口を噤む。
苦い顔をする太宰だったが、彼女は困ったような笑みを浮かべるだけで特別叱責することはなかった。
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煉華☆(プロフ) - ラズベリーさん» 返信遅れてしまいすみませんでした!先ほど承認を出させていただきました。双黒良いですよね、私も最推しです(*^^*) 最終更新からかなり日が空いてしまいましたが、今日から再開予定ですのでまた読んでいただけると幸いです。コメントありがとうございました! (2019年9月27日 8時) (レス) id: fa2422e9a4 (このIDを非表示/違反報告)
煉華☆(プロフ) - 燐華さん» 返信遅れてしまい申し訳ありません。わざわざ申請してもらったのにこう言うのはなんなのですが、文章をしっかりと読んだ上での申請をお願いしております。フレンド数の上限の関係でこうなってしまって本当にすみません!拒否はしてませんので良ければお待ちしております (2019年9月27日 7時) (レス) id: fa2422e9a4 (このIDを非表示/違反報告)
ラズベリー(プロフ) - フレンド申請させていただきました。〈ラズベリー〉です!推しは旧双黒の2人です!このお話凄く面白いのでこれからも更新頑張って下さい! (2019年9月18日 16時) (レス) id: 56fb91a534 (このIDを非表示/違反報告)
燐華(プロフ) - フレンド申請させていただきました。ユーザー名は彼岸花です。 (2019年9月18日 9時) (レス) id: 7838562921 (このIDを非表示/違反報告)
煉華☆(プロフ) - サナさん» いただければ幸いです。 (2019年7月5日 15時) (レス) id: fa2422e9a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:煉華 | 作成日時:2016年12月19日 15時