弐拾伍頁─体術ノ教エ─ ページ32
A Side
フルールの前を進む早い足取り。
しかしそれは決してこれから行うことが楽しみだからという理由ではないのだろう。
あれはどちらかと云うと、早く済ませてしまいたいから急ぎ足になっているといった感じだ。
後ろ姿から容易く読み取れるその表情に私はフルールに指示を飛ばす。
少し本気を出してこい、と。
『それじゃあ私達も始めようか。まずは上体起こし三十回ね』
私も一緒にやるから、と付け足して持ち込んでいた大きな布を床に敷く。
布は川の字で寝ても少し余裕があるくらいの大きさ。
邪魔な外套は脱いで畳んで隣に。
隣を見ると彼もそれに倣って外套を布の端に置いていた。
『最高で何回くらいしたことあるの?』
「恥ずかしながら十五年生きてきて意図してやろうと思ったことはありません。零回みたいなものです」
私は顔をしかめる。
じっとその目を覗き込み、数秒後揺らぎのないそれから溜息と共に目をそらす。
きっとこの場に彼女が居れば、幸せが逃げてしまうとか何とか口煩く云われることだろう。
『太宰、四十回やろうか。時間は二分。それから一分休憩して体術の稽古。......今後、悪い意味での予定崩しは半殺しだから』
地底に響くほどに暗く、低く、冷たく。
それほどまでに私の気分は悪かった。
予定を乱すことは私自身よくやる。
だから強くは云えない。
しかしこの時間だけはどうしても譲れない。
直ぐに書き出さなければ次の日には...
「...すみません。中也にも伝えておきます」
『ごめんね、ありがとう。......太宰、何か好きな花を教えて』
空気が重く、居心地が悪い。
無意識に正座になってしまいそうなのを堪え、私はその応急処置として話題をふった。
急な要求に太宰は僅かな驚きを見せる。
「そうですね...
『ふふっ、成程。善いね、君らしくて』
その花の名前に思わず笑みが零れる。
本人はその花言葉を知ってか知らずか、私はとても彼にお似合いだと思った。
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煉華☆(プロフ) - ラズベリーさん» 返信遅れてしまいすみませんでした!先ほど承認を出させていただきました。双黒良いですよね、私も最推しです(*^^*) 最終更新からかなり日が空いてしまいましたが、今日から再開予定ですのでまた読んでいただけると幸いです。コメントありがとうございました! (2019年9月27日 8時) (レス) id: fa2422e9a4 (このIDを非表示/違反報告)
煉華☆(プロフ) - 燐華さん» 返信遅れてしまい申し訳ありません。わざわざ申請してもらったのにこう言うのはなんなのですが、文章をしっかりと読んだ上での申請をお願いしております。フレンド数の上限の関係でこうなってしまって本当にすみません!拒否はしてませんので良ければお待ちしております (2019年9月27日 7時) (レス) id: fa2422e9a4 (このIDを非表示/違反報告)
ラズベリー(プロフ) - フレンド申請させていただきました。〈ラズベリー〉です!推しは旧双黒の2人です!このお話凄く面白いのでこれからも更新頑張って下さい! (2019年9月18日 16時) (レス) id: 56fb91a534 (このIDを非表示/違反報告)
燐華(プロフ) - フレンド申請させていただきました。ユーザー名は彼岸花です。 (2019年9月18日 9時) (レス) id: 7838562921 (このIDを非表示/違反報告)
煉華☆(プロフ) - サナさん» いただければ幸いです。 (2019年7月5日 15時) (レス) id: fa2422e9a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:煉華 | 作成日時:2016年12月19日 15時