215話 ページ34
私が失笑気味に言えば、伊黒さんは眉をひそめる。
本当に美味しく食べてるように見えたのかな、それなら完璧なんだけど。
『…鬼と人は体の作りも味覚も違います。美味しいはずの甘味も私達からは吐き出したいほど不味く感じる…』
そもそも鬼が人間の物を口にしようとする事が少ないだろうけどね
『でも、今みたいな時もあるから…必死で誤魔化せるように練習したんです。ちゃんと普通の人になれるように』
前世で何度も吐いた。
購買のシンプルなサンドイッチが一番誤魔化しやすかったから、いつもそれを食べて。
けどたまに友達が「不健康だよ」って、お弁当のオカズをくれたりした。
嬉しかったけど、素直に味わえない自分が辛くなったっけ…
「…どうしてそこまでする」
体の作りが違うから、体がきちんと分解してくれない。
体に悪いだろうから、きっと後で吐かないといけない。
それなのに、どうしてそこまで…
『…』
…あのカステラ勿体なかったな
あの時は咄嗟で美味しく食べるふりをしちゃったけど、苦手と言って甘露寺さんへ譲れば良かった。
いやでも、この時代にアレルギーとか無いだろうし…
断ったら失礼な感じするよね。
『…お店の人が心を込めて作ってくれているから…せめて彼らの前では、喜んで貰えるように美味しく食べたいんです。』
本当ならお店の人も、甘露寺さんみたいに正真正銘美味しく味わえる人に食べてもらいたかっただろう。
手遅れだが、失礼になるけど断るべきだったかもしれないな。
けど彼らの前では美味しく食べられた。
おばあさんも微笑んでくれたから許して欲しい。
『……それに…人と同じ物を食べたら、私も人になれる気がして』
絶対そんな事は無いけど、前世から思ってしまうんだ。
鬼となり、人の物を口にするのは初めてだけれど…
前世では日常的に食べていたから、その度に思っていた。
いつか私も普通の人みたいに、これを美味しく食べられる日が来るんじゃないかな…と
まあそんな事は有り得ないんだけどね、知ってるよ私でも。
「Aちゃん…」
甘露寺さんの目が悲しく揺れた。
あっ…何か暗い雰囲気にしてしまった
「ごめんなさいAちゃん…此処へ連れて来てしまって…」
そうすればAちゃんが無理をする事も、そんな辛そうな顔をする事も無かっただろう…と言う。
『え、そ、そんな！気にしないでください！』
別に優しい貴方を困らせたい訳じゃない
それに私は辛くないさ。
…ただ、ちょっとたまに心がしんどくなるだけ
.
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癒し系猫(プロフ) - 宇髄の髄は隨じゃありませんよ〜！ (2023年5月2日 19時) (
レス) @page20 id: 0e8640f8c4 (このIDを非表示/違反報告)
まどろみ(プロフ) - 呉羽さん» 作者の妄想やら想像詰め込みまくりですよ笑 そう言って頂けて嬉しいです！ (2020年3月25日 21時) (レス) id: ec3dea80f5 (このIDを非表示/違反報告)
呉羽(プロフ) - 面白い！こういう話大好き (2020年2月20日 4時) (レス) id: 14d7fd66da (このIDを非表示/違反報告)
まどろみ(プロフ) - 呉羽さん» ありがとうございます！いつも応援して下さってますよね、本当に嬉しい限りです！頑張りますううううううううう！！！ (2020年2月4日 7時) (レス) id: ec3dea80f5 (このIDを非表示/違反報告)
呉羽(プロフ) - おもしろいです。完結するまで毎日見るねええええええええええええええええええええ！！！ (2020年2月2日 9時) (レス) id: 14d7fd66da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まどろみ | 作成日時：2020年1月1日 21時
