193話 ページ11
動かない宇随さん
兄は、毒で心臓が止まっていると言った。
嘘だと言いたかった
でもそれは紛れもない事実、私が見ているしか無かった事もまた事実だ。
"信じたくない"とか何も出来なかった私なんかが口にしていい事ではない。
『…宇随、さん』
「辛いなぁ惨めだなあ。お前鬼のくせに何も出来なかったもんなあ」
兄は宇随さんから離れると、倒れたままの私に言った。
「藤の毒でなあ、早々に動けなくなってたもんなぁお前。惨めで役立たず、何もしてねぇよなぁ」
私はただ虚ろな目で、兄の言葉を聞いた。
目の前でまた大事な人を失ってしまった…
それに、彼が…頼みの柱が居なくなり私達がこの上弦に勝てる見込みは皆無。
炭治郎くんが、伊之助くんが、…そして善逸くんも皆死んでしまう。
皆が…死んでしまう
「お前の事あの方が言っていたなあ。支配から外れた例外の鬼。あいつら皆殺してから、あの方の前に引っ張ってってやるからなぁ」
そういえば妹も先程言ってた…
私と禰豆子ちゃんの存在は既に鬼舞辻に知られていると。
だとすれば禰豆子ちゃんも危険な目に…
『っ』
…それら全て私が動けていたら、宇随さんが生きていれば起こらないはずの未来なのに。
『(っ、ごめんなさい…)』
兄の言葉は紛れもない事実だ
兄は私の絶望した顔を見て満足したようだった。
踵を返すと再度宇随さんの元へ寄る
『…何をするつもり』
鎌を振り上げていた。
「切り刻むんだよ、本当はうんと苦しめて殺したかったがなぁ簡単に死んじまったからなあコイツ」
だから死体はせめて無様にしてやると、
絶望しかない私の目に改めて怒りが登った。
ふざけるな、お前なんかが宇随さんに近寄るな。
散々毒で苦しめておいて殺したくせに、まだ足りないと言うの?
いやそもそも私がこんな事になってるのが悪い。
知ってる、分かってる
けどそんな事、そんな事絶対にさせられない
『させないっ!』
「できるもんならやってみなぁ。未だに地べた這いつくばってるお前に、出来るものならなぁ」
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ…!
彼が切り刻まれるなんて見たくない、させたくない
何でそんな事が出来るの?
意味がわからない、冒涜だ。信じられない
…あぁこれも全て起こるはず無かったのに
私が無力なせいで、役立たずのせいで。
『止めて!!宇随さんから離れろ!』
今自分の出せる最大限の声を枯らして叫んだ
嫌だ止めてお願いだから止めてくれ
けれど兄は鎌を振り下ろす。
そしてその瞬間、私の視界は真っ黒に染まった
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癒し系猫(プロフ) - 宇髄の髄は隨じゃありませんよ〜! (5月2日 19時) (レス) @page20 id: 0e8640f8c4 (このIDを非表示/違反報告)
まどろみ(プロフ) - 呉羽さん» 作者の妄想やら想像詰め込みまくりですよ笑 そう言って頂けて嬉しいです! (2020年3月25日 21時) (レス) id: ec3dea80f5 (このIDを非表示/違反報告)
呉羽(プロフ) - 面白い!こういう話大好き (2020年2月20日 4時) (レス) id: 14d7fd66da (このIDを非表示/違反報告)
まどろみ(プロフ) - 呉羽さん» ありがとうございます!いつも応援して下さってますよね、本当に嬉しい限りです!頑張りますううううううううう!!! (2020年2月4日 7時) (レス) id: ec3dea80f5 (このIDを非表示/違反報告)
呉羽(プロフ) - おもしろいです。完結するまで毎日見るねええええええええええええええええええええ!!! (2020年2月2日 9時) (レス) id: 14d7fd66da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まどろみ | 作成日時:2020年1月1日 21時