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4話 ページ6

((グサッ


『っっ〜〜!』
私は自分の腹へ足元の鎌を突き刺した。
溢れ出す真っ赤な血
『ぐ、ぁっ』
口からも血が溢れてボタボタと落ちる。
でもどうせこの傷も治るんでしょ?
男に開けられた穴も塞がってたし
痛いのを我慢するのは慣れている。

『…っ』
痛みで理性が戻ってくる。今のうちに!
私は玄関を飛び出した。
月が傾いてる。
もう真夜中を過ぎたらしい。
真っ暗な山道を裸足で駆け上がる。
あちこち木に引っ掛け体から血を垂らしながら山を上る。



理性がきれそうになりながら考えた。
…私はもう人間じゃなくなってしまった。
家族を、人間を食べようとした…
前世と同じ喰種のようになってしまった
今は痛みでなんとか保ってるけど、ここで本能に身を任せたらダメだ
もう人間じゃないけれど、割り切った方が楽だけど…っ
『…』涙が止まらない。
どうして私の幸せは壊れたの。どうしてあの男は現れたの?



『!日が…』
山が少し明るくなった気がした。夜が開けようとしている。『どこか…』
直感的に日光へ当たれば死んでしまうと思った。
なぜかはわからない。
けど暗いところへ行かないと

理性で本能を押さえつける必要がなくなった。
"食べたい"ことより日光から隠れて身の安全を確保する方が優先事項だと体が判断したらしい。
『…あっ』
近くに山小屋を見つけた。
だいぶ古く何年も使われてなさそうだけど日光から逃れることはできそうだ。
私は急いで中に飛び込むと部屋の中へ倒れ込んだ。

日光が出ているうちはこの体では外へ出られない。
体はそれをわかっているから人を食べようにもできないから、さっきまでの本能が消えていく。
理性を失ってしまうほどの"人間を食べたい欲"が出てこなくなった。
『…太陽があるうちは安心か』
夜になったらわからない。
山を降りようとするかもしれない。
そのとき私は自分を押さえつけられるだろうか、
いや押さえつけないとダメだ。
食べるなら自分を食べろ、どうせ回復する。

私の腹の傷はもう治っていた。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それからかなりの月日が経った。
夜になると外へ出ようとする体を何とか押さえつけて、時には自分を噛んで、私は理性を保ち続けた。
来る日も来る日もそれを続けて、はじめの方は何度夜が開けたのか数えていたけど今はもうどれくらい経ったのかわからない。

耐えて耐えて耐えて耐えて。
気がつくと私は、
『…あれ?』
夜になっても人を食べたいと思わなくなった。

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まどろみ(プロフ) - 猫宮さん» ありがとうございます!! (2019年11月24日 17時) (レス) id: ec3dea80f5 (このIDを非表示/違反報告)
猫宮 - こーいう作品大好き!かまぼこ隊も大好き!最高! (2019年11月14日 17時) (レス) id: a4825ec2c2 (このIDを非表示/違反報告)
まどろみ(プロフ) - kori1224さん» ありがとうございます!ゆっくりですが毎日更新目指しますね! (2019年9月28日 8時) (レス) id: ec3dea80f5 (このIDを非表示/違反報告)
kori1224(プロフ) - こう言う作品好きです!更新頑張ってください!!! (2019年9月25日 22時) (レス) id: 6a27cb7555 (このIDを非表示/違反報告)
まどろみ(プロフ) - あんこさん» ありがとうございます!その言葉だけで更新頑張れます! (2019年9月9日 15時) (レス) id: ec3dea80f5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まどろみ | 作成日時:2019年8月29日 21時

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