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「俺の住む日本は、今の少子高齢化問題を乗り越えて、若者が溢れた国になってる。」
「車は自動運転に、学校は全インターネット制になった。」
「つまり、学校自体が無くなり、学生たちはパソコンの動画だけで勉強する時代になったんや」
「…だから、この時代はめっちゃ楽しかった」
「毎日学校来て、毎日学校でみんなと話して、お前と帰って、馬鹿みたいなことで笑って」
”楽しかったんや。”
その大毅の言葉が、すごく重くて悲しくて
寂しい。
もう、彼の中でその思い出は”楽しい”ではなく”
楽しかった”と過去形に変わっている。
ずっと”今”にしたいのに。
それは大毅も同じなはずだよね?
「なにそれ、楽しかったって。過去形?」
「……ん」
「意味わからん。たとえ未来人でもここにおる大毅は、」
言葉が詰まる。
「大毅は」からの先が言えない。
なんで、泣いてんのよ。
男でしょ、子供みたいにぐずぐずしないでよ。
「ね、ねぇ」
「俺だってっ…もっと居たいっ…」
ごめんなって何回も言いながら
嗚咽しそうなくらいに泣いてる大毅を、
見つめるしかできない。
泣いている姿を初めて見た。
それは、私に現実を突きつけていることで
大毅が本当に居なくなってしまう、
もう、会えない。
そう言われてる気がした。
「ごめんっ……さっきのは取り消す」
え、と私が声を漏らすとまたいきなり立ち上がって
「楽しーーい!!!」
って人目をはばからず叫んだ。
そして私を見て、笑った。
涙が溢れた。
でも泣いてしまうと、キリがない気がして
ぐいっと拭って彼のように立ち上がった。
「お前とおるのが楽しい。学校も、馬鹿騒ぎも
全部全部、俺の宝。」
「うんっ…」
「一生忘れへん。思い出にもしやん。ずっとずっとこのままにしよう。」
もう、過去ではない。
大毅の今は、私の今。
私の未来も、大毅の未来。
「ずっとずっと、一緒な」
ぎゅっと包まれた手が、温かい。
ここに居る、大毅がここに。
彼も同じ気持ちだろうか。
私たちは、しばらく夕日を眺めていた。
繋いだ手はそのままで。
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作者名:のらら | 作成日時:2018年8月9日 0時