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「ねぇ、重岡くんって彼女おる?」

「おらんよ。おったら私とおらんやろ」

「そうやんな。じゃあ好きな子は?」

「しらーん。気になるんやったら本人に聞きや」

「いや、でも、話したことないし…あ、
好きな女の子のタイプって…」

「さっちん…」

「ん?」

「大毅のこと好きなん?」

「ばっ…!!」






花火大会も近くなる中、
夏休みでも夏期講習で学校に行く。

クーラーの中、ちゃんと勉強してる人は
ごく僅か。
みんなお喋りに夢中で、黒板に書かれた雑い字の
「集中!!」がちっぽけに見える。






「はぁ…受験生、勉強しなきゃなのにね…」

「別に恋くらいしてもいいやん」

「Aの好きな人は?」

「…いや、おらんけどさ」

「そっかぁ、」






うそ、うそです。

私はいつから悪い人になったのだろう。
好きな人が被っただけで親友に嘘ついちゃうなんて。


そりゃ、大毅だって選ぶ権利はある。
でも私は圧倒的不利だ。

確かに距離は私の方が近い。
でも、さっちんは、女の子っぽいし
犬好きだし、髪の毛くりくりだし、目ぱっちりだし。

私なんかばりばりスポーツ女子だし、
日焼けで真っ黒に近いし、
犬は苦手だ。






「あ、重岡くんや」

「え、」




グラウンドの外で、藤井とキャッチボールをしてる大毅がいた。
夏期講習放棄して遊ぶなよ、と思いながら
見つめてると、先に藤井がこっちに気づいて
大毅もこっちを見て笑った。

大きく手を振る相手が、私でありますように。
その眩しい笑顔を向けてるのは私でありますように。と
蝉の鳴き声に紛らわせた。






「重岡くん、私のこと見えてるのかな」

「え?」

「藤井も、重岡くんも、Aに手振ってるよ?」

「あ、そう…そっか」



「私の夏も終わりか〜」





そう、伸びしながら言うさっちんの声がすごく遠く感じた。



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作者名:のらら | 作成日時:2018年8月9日 0時

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