雪の傍で。 (ページ9)

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着くと、都会よりも深く積もった雪たちが僕らを迎えた。

「雪だー！」

向こうでは雪が降らなかった。と
外国の話をする彼女は、どんどん先へ行ってしまう。

それを僕は後ろから微笑ましく見つめ、
はしゃぐ彼女を、抱きしめたいと思った。
でもそれはぎゅっと手を握り押し殺した。

もう僕は彼女を愛してはいけない。

そう思うと自然と涙は出なかった。
割り切ればいいのだ。

「おお！大毅くんやんか！」

背後からよく通る声が聞こえ、振り返ると
当時可愛がってくれていたおっちゃんが軽トラから顔を出していた。

「おっちゃん！久しぶりー！」

「兄ちゃんなったなぁ、見違えた」

「俺ももう20代後半やで？」

「おお、Aも元気か？」

よっぽど嬉しかったのかまだ雪と遊んでいる彼女を、遠くから見つめた。

白い息を吐き、それは悲しいからなのか
どことなく自分を傷つけた。

「結婚してん、あいつ」

「え！Aが？！」

「おん、ほんま妹のくせに生意気やろ？」

「先越されよってー！気の毒やな！」

「ほんまやで！」

おっちゃんの豪快な笑い声と僕の乾いた笑い声。
ほな行くわ、とエンジンをかけたおっちゃんに手を振る。

追いかけるように彼女の元に行けば、
二人でよく来た公園のブランコに座っていた。
黒い髪に積もった雪を払ってやると、
顔を上げ、目を真ん丸にした彼女。

泣いていた。
鼻を赤くさせて。
あの時言った、トナカイみたいや、と僕の言葉がフラッシュバックした。

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