雪の傍で。 (ページ8)

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二度目の離婚が決まった時にはもう彼女は海外へ旅立っていた。さよならも言わずに別れた僕らは兄妹からまた幼なじみへと戻った。

その時僕は、激しい束縛感から解放され
もう一度君を素直に愛せる気がした。

数年後、僕の元に届いたのは結婚式の招待状だった。参加に丸をした時、僕は君と会うのが10年ぶりだったことに気づく。

「これ、Aに渡して欲しいんやけど」

おとんに渡されたのはAが中学までしていたネックレスだった。お父さんの形見だ、と肌身離さず付けていたくせに、家を出た時にはすっかり忘れて行った。

「あいつ、あんなに大事にしてたのに」

「あの子うっかりさんやからなぁ、ほな頼んだで」

結婚式には行ったが、結局話さず帰ったため実質会うのは久しぶりだ。
カフェで待ち合わせをして、着いた時にはもう彼女はコーヒーを飲んでいた。

「久しぶり」

「せやな、あ、これ」

鞄からネックレスを取り出すと声を漏らす彼女。本当に忘れていたようだ。

「これ…」

「大事やろ？それ」

「うん、すごく。ありがとう」

で、新婚生活どうですか。と嫌味っぽく言えばわかりやすく顔を紅潮させる。
あぁ、幸せなんだ。となぜか悲しくなる。
不幸せでいてほしかったなんて思ってないけど僕がいなくて寂しかったくらい言って欲しかった。

「結婚式、綺麗やった」

「来てたの？言ってよ」

「だって、」

「あ、大毅彼女いるんだって？」

きっと流星が言ったのだろう。
ただそのことは嘘になる。彼女は僕がふられたとは思っていないだろう。

「別れた、この間」

「なんで？同棲してたんでしょ？」

「うん、俺が悪いねん」

思い出しただけで涙が出そうだ。
実は彼女が出て行った後僕は朝が来るまで泣いていた。本当に好きだったんだ。

「そっか、ねぇまた今度三人でご飯でも行こうよ」

「三人って誰？」

「崇裕くん。あ、うちの夫」

「なんで」

「彼も話してみたいって」

彼も同様に、留学生で留学先で二人は出会ったらしい。高学歴、経歴も申し分無し、金持ち。

全て俺から逸れてる。

「あ！」

「ん？」

「雪！」

「雪？」

窓の外を見ると、いつの間に降っていたのかどっさり雪が積もっている。ふとあの頃の雪を思い出した。雪玉を投げて当たった時に振り返った彼女の顔。綺麗で、白くて、柔らかい。

ゆっくり、僕を狂わせる。

「久しぶりに、田舎帰ろか」

「うん」

二人で電車に揺られ、僕らが育ったあの街へ。

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