雪の傍で。 (ページ7)

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「大人になりたくないな」

「なんで？」

「だって、色んなものから何かを押し付けられて自分が保てなくなる。意見さえも咎められていつしか自分が自分の中で迷子になるの」

「誰かに言われたん？」

「ううん、そう思うの」

「確かに」

「そんなんだったら私、ずっと子供がいい」

お互いの親が再婚し、僕らは兄妹となった。
何かあったら支え合おう。そう約束し
月日は流れ、君も僕も高校生になっていた。

当時君はクラスから小さないじめを受けていた。気づいていたし、Aを庇ったりもしていじめは薄れていったが、それが原因で僕らは変な噂を流され、遂にはAから友達が居なくなった。

「大毅、」

「どないした？」

「このこと、大毅にしか言えないから誰にも言わないでね」

大毅にしか。
その言葉が僕の胸に引っかかった。

どんな秘密を共有しても、僕は君を愛していた。
でも、それは僕だけな気がして不安だった。

「俺にしかって、どうゆう意味？」

「え、」

「幼なじみやから？唯一の話し相手やから？
友達俺しかおらんから？」

「なんでそんなこと言うの、」

「大体、おかんに言えよ。自分の母親なんやしさ。俺みたいなあほに聞いても、」

気づけばAは泣いていた。
僕も止まらなくなってきつい言い方になっていたことに気づき、思わず口を噤んだ。

「大毅に、聞いて欲しいから言いたいんだよ」

「…ごめ、」

「私たち、家族でしょ？」

「え？」

「…家族じゃないの？」

両思いだったはずの僕の恋。
それは、あっという間に片想いだったことになった。
彼女からしたら僕はただの家族。
同い年で、幼なじみで、兄に過ぎないのだ。

僕はいつまで経っても、君と暮らしているのが不思議で仕方なかったのに。

「俺は、お前のこと、家族やなんて今の今まで思ったことない」

「なんで、」

「なんでって、そんなん、」

好きやからに決まってるやろ。
それは心の中で叫び、声にはならなかった。

乾いた唇は、少し空いたまま閉じなくて
ただAの涙を見つめるしかなかった。

「…留学したいの」

「は、？」

「それが、言いたかった」

「行くなよ、急に何言うてんねん」

「もう決めた。遅いよ大毅」

行くなよって、言うの遅いよ。
もう気持ち冷めちゃった。

無理に笑った泣き顔の君は、
僕の黒歴史に残るくらい、思い出したくない笑顔。

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