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アナウンスが流れ、大きな扉が開く。
振り返ると真っ白い光を背後に、彼女がドレスを見に纏い歩いてくる。

なんて綺麗なんだ。
あの時見た、あの街の雪のように白い彼女に見とれていた。

手を伸ばしたら、君は僕の方に来てくれるだろうか。
差し出すこの手を、握ってくれるだろうか。

この冷たい、悴んだ手を。




「それでは、誓いのキスを」




思わず顔を背けてしまった。
あの時君にキスをした思い出は黒歴史のような忘れたくない記憶のような。

ただあの時君は確かに僕を好きだったんだ。
僕ではない人とキスしているところなんて反吐が出る。




「おい、しげ」

「ん?」

「お前、Aのキスんとこ見てなかったやろ」

「あぁ…眠くて」

「はあ?バイト入れすぎやねん、寝不足野郎。
今日くらいしっかり目に焼き付けとけ」

「はは…」



高校の同級生の流星に、肩を叩かれた。
あの頃は思ってもみなかった。
好きな人の結婚式に呼ばれる時が来るなんて。

二次会はもう参加しなかった。
同棲中の彼女に心配をかけたくないのもあるが、
もうこの空気には耐え難い。




「お前さ、彼女おんのにまだAのこと好きとか、諦め悪過ぎやで」

「好きちゃう」

「嘘や。お前はあいつが好きやねん。
大人になれ、もう若ないねんから」




流星は、俺の何を知ってるんやろか。
あの小さい街で育った俺達は、なんでも分かりあってるはずやった。


でも俺は、Aのことも流星のことも全然分かってなんかなかった。





だから俺は、いつまでも彼女に好きと言えなかった。



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作者名:のらら | 作成日時:2018年11月30日 23時

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