雪の傍で。 (ページ15)

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「本当はずっと待ってた、大毅のこと。
いつか迎えに来てくれるんじゃないかって」

「え、」

「でも、よく考えたら勝手に外国へ逃げたのは私だった。なのに待ってたなんて図々しいにも程があるよね」

僕も君を待っていた。
いつかまた、あの雪に埋もれた街に君が帰ってくることを夢見て僕は大人になった。

でもそれは彼女も一緒で、お互いが待って待って、途方もないくらいに待って
結局彼女は結婚してしまった。

「大毅は私と同じ気持ちだった？」

「俺はお前が好きやった」

「今は？もう好きじゃないの？」

「…なんなんそれ、ずるいやんか」

「ごめん、こんな言い方」

「うん…」

彼女とはきっと今でも両思いだと思う。
でも彼女には濵田さんがいて、濵田さんも彼女を手放す気は無いし、彼女も離れる気はないだろう。

なら僕のこの恋は、今度こそ崩れ落ちる。

「ずっと私、不安だったんだよ。大毅が私と同じ気持ちかなって。何食わぬ顔であの時”着いてくる？”なんて言うからただの天然なのかと思っちゃった。」

「俺は、」

「大毅のそうゆうところ、私はね、そこが嫌で貴方と一緒にならなかったの。自分に自信が持てないから」

「A、」

「だって大毅、私に一度も気持ち伝えてくれなかった。いつも私からだった、狡い聞き方してそれに私はまんまと沈んでくの」

「狡いって…そんな言い方ないやろ」

「そうだよ、わざとじゃないんでしょ
ずるいのはどっち？大毅だって十分ずるいよ」

テーブルから身を乗り出し、僕の頬を触る彼女。
耳にかけている髪がさらりと落ちる。

「好きな人をなんとしてでも手に入れたいなら、
ずるくならなくちゃいけないの」

幸せな朝のはずだった。
なのに窓の外の雪と、彼女の涙でいっぺんに悲しい朝に変わる。

「大毅が私を心の底から好きになるなんて
海が真っ二つに割れる可能性ぐらい低いよ」

彼女を誰よりも愛しているつもりだった。
誰がなんと言おうと彼女の全てに恋をしていたと思っていた。

だけど彼女は気づいていた。
その感情が薄っぺらいことに。
僕もその彼女の気持ちに気づいていた。
だから素直に愛せなくなって、どんどん気持ちは冷めていって、再会した途端に蘇った。

「お前のせいで俺は、臆病な性格になったみたいや。」

そうだ。全部全部、君が悪い。
君が僕と出会ってしまったから、
お互いこんな思いをしなくちゃいけないなんて。

どれだけ惜しんでも惜しみきれないよ。

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