雪の傍で。 (ページ2)

今日:6 hit、昨日:0 hit、合計:7,133 hit

．ページ2

✲
long time ago．．．

「てぃ！」

「うわ、ちょっと」

「命中～」

「んもう、せっかく髪の毛巻いたのに」

この街に久しぶりの雪が降った。

深く積もった辺りは何よりも白くて、
そんな日に学校があるのが憎らしい。

今日くらい、休みでいいのに。
つるつる滑る地面に足を進ませる。

そうすると、ちょうど君も家から出たところで、
すぐさま小さい雪だるまを作り、彼女の頭へ投げつけた。

痛くないように柔く作ったから、当たると儚く砕け散り、君が振り返る。

その瞬間、僕の心臓は鼓動を早め、顔には熱が集中する。
それを彼女に気づかれたくなくて、照れ隠しのように意地悪を言った。

「こんな冬に色気づいてよぉ。誰もお前の髪なんか見てへんわ」

「分かってるよ、私が気にするの。ほら、寝ぐせとかすごいし」

「寝ぐせなんか俺しか気付かんわ」

つん、と彼女の頭をこついたら、髪に絡まった雪が舞った。
それと同じく僕の真っ黒い髪に積もった雪もはらはら落ちて行く。

そうやって君も、この街から消えてしまうのかな。

もう少し学校まで時間あるから公園で雪だるまを作ろう、と提案すると彼女はほんのり赤い唇の口角を上げ、〝うん〟と微笑む。

彼女の手には、去年誕生日にあげた赤色の手袋がはめてあった。

また僕の鼓動は速さを増した。
気持ちの期待と辺りの雪は積もるばかり。

僕の一方通行も。

．