【BL短編集】収集癖 (ページ6)

今日:9 hit、昨日:11 hit、合計:23,294 hit

承認欲求 krna ※DDC捏造ページ6

※DDC妄想
※ネタバレを含みます(感想戦まで)
見方を変えるとna→kr

━━━━━━━━━━━━━━━
ーna sideー

na｢いっちゃった…｣

団長のサーカスから出ることに成功した4人を見送り、振っていた手をゆっくり下ろした

団長はもういない、観客ももう居ない

あるのは俺の魂と、人形と化した人々の亡骸のみ

ピエロとして過ごした日々は、そんなに悪いものではなかったと記憶している
そりゃあなったばかりの頃は地獄だった

一緒に来ていた人たちや知らない人たちの死体の処理したり、人を騙してサーカスに連れ込んだり

俺は人形の体に命として吹き込まれただけに過ぎないから心がどれだけ痛んでもやめられなかった

そんな俺をここまで支えてくれたのが団長だった、こんなにしたのも団長だけど

"ありがとう"、"よく頑張ったね"
彼は仕事の後は決まってそう言って俺の頭を撫でた
その時間が何より心地よくて、感覚が麻痺しだした頃からは彼に褒められるためだけに仕事をした

魂だけ抜かれて、まだ生きのある人間にとどめを刺す仕事をしたこともある
それでももうなにも感じていなかった

彼が、褒めてくれるから
魂を拘束され、完全に彼の人形と化した俺にはそれだけが生き甲斐だった

あの4人が運良く見つけた手記は確かに俺が書いたが何年も前のもの
今の俺は、完全にあいつらを殺すつもりだった

でも、失敗した

団長が死んだあとは彼らをすんなり帰したよ、だってもう意味ないもん

殺しても、騙しても、もうあの団長は褒めてくれない

もう1回撫でて欲しいな

もう1回笑顔で褒めて欲しいな

いっそ、この体すら放棄して天に還ろうか
そうすれば…いや、そしたらこの夢の世界はどうするんだ

団長を守りきれなくて、しかもこのサーカスや俺の体を放棄したなんて言ったらきっと褒めてくれないよね

じゃあ、それなら

団長の持っていた黒いステッキ、団長によく似合っていた帽子
あと、団長が愛してたサーカス

少し借りるね

それで、俺が継ぐ

あなたがやって見せたように、沢山のキャストを用意して、永遠に目覚められない夢の世界を作ってみせる

そうすれば、俺が殺された時

あなたはめいっぱい褒めてくれるはずだから