【prsk】可惜夜海岸掠われて【朝函蕫まふゆ】 (ページ3)

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まふゆ side

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「海に行きたい」って思ったのは、いつだったかな。

つい最近だった。

その時はいつもより授業がつまんなく思えて、でもちゃんと授業を受けないと成績に響いてしまうから、ノートに授業の内容をまとめながら、ふと窓の方を見た。

快晴。

その空の青さに脳みそがジンと痺れたのを今でも鮮明に覚えているの。

いつもあの下を歩いて学校に行っているはずなのに、その時見た空は、何より一番の美しいものに思えた。

すぐに目線を黒板に戻したけれど、しばらくはあの青が忘れられそうにないのを感覚で気づいていた。授業中だったのを、心から恨んだ気がする。

授業が終わって改めて見た空はいつも通りだった。特別な奇麗がそこには無かった。

ぼーっと眺めた先の青が、いつしかに見た海の色にそっくりなことにハと気がついた。テレビだったか、お母さんに連れていってもらったか分からないが、海の色。

不気味なくらい真っ青な海が、フィルターを通して私のまぶたの裏に映る。

……あの海の色が、特別な奇麗をほどこした空と同じ色だと。

それに気づいてしまって、がたりと席を立ち、ほんのり駆け足でAのいる教室に向かう。

止まることはできなかった。体が勝手に動く心地がして、誰かに操られてるみたいで。でも嫌じゃなかった。

「ッ、…、…A！」

教室に着いて、胸に手を置いて、大きめの声でAを呼ぶと案外すぐにAは私の前に現れた。急に訪れた私に目を見開いている。

『ど、どうしたのまふゆ。急用？何かあった？』

ドアを塞がないよう、少し横にずれて私の肩に手を置くA。息を吐いて喋ろうとすると、周りの目が私達に向いているのを感じた。

なぜだかそれがすごく嫌になって、当たり障りの無い笑みを作って、当たり障りの無い声色に変えて、いつもみたいにAに話をする。

「…ねえ、今度放課後に図書室で勉強しない？ …分からないところがあるから、一緒に解きたいの」

『！』

予習復習を繰り返して、先のことまで勉強してる私には、分からないところなんて無かったが。

これは人前で喋りたくないときに使う、Aと私だけの言い訳だった。