最後の鏡は空の色 _奏 ページ25
奏 side
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『ほら、見て。空はこんなに綺麗なのに! 奏にも伝わったらいいな』
メッセージと共に ぽこんと送られた 青色と白色のコントラストが綺麗な空。
家に引きこもってばかりの私に 空の写真を送るようになったAは、いつもこうやって私に外を見せる。
今日は 雲の無い快晴… とまではいかないものの、ほどよい気温と空の色。この前は どんよりとした灰色の空。
1日1日丁寧に写真を撮って、一言を添えて、日記のように私に写真を送る。
最初こそどうでもよかったものの、最近はそれが楽しみになっていた。
日光を浴びるのは苦手だけれど、Aから送られてくる空の写真を見ると、はらりと窓の外を覗きたくなるのだ。
大体はそれで目がやられて、もう空なんか見るものか、と何度も思ったりもしたけど。
Aから青空の写真が送られてくると、また窓の外を覗きたくなる。不思議だった。
明日はどんな空なんだろう、と お見舞いに行かない日も 自分から天気予報を見たりした。
それで 天気予報どうりの空の写真が送られてくると、なんだか嬉しくなったりした。
私にとって、Aから送られる写真が かけがえのないものになっていた。どんな空だって 送られてきただけで 自然と顔が綻ぶようになってった。
_それなのに、突然、Aからのメッセージは途絶えてしまった。
一週間前までは いつも通りに写真が送られてきたのに。
一週間経っても、写真は送られてこない。
どうしたんだろうって思って メッセージを送ってみると、案外すぐに返信が来た。
『疲れちゃって。空が全部おんなじように見えるようになっちゃったから、写真はやめたんだ』
『ごめんね、迷惑だったでしょ。もうやめるね、奏は元気に過ごしてね』
文章だけの冷たさは計り知れない。絵文字も 感嘆符も 疑問符も 何もない文は、Aとは別人のようにも思えた。
それだけじゃなかった。空をこの上なく愛していたはずのAが、すべてを無くしてしまった挙げ句、もう空の写真は送られてこないらしい。
「奏は元気に過ごしてね」という文が、あまりにも自暴自棄のようにも思えて。
思わず玄関から外に出て、なりふり構わず上に向かってスマホを向けた。
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さき(プロフ) - ふみふゆさん» 迷惑だなんて、とんでもない!とっても嬉しいです!ありがとうございます…!! (2月6日 19時) (レス) id: bc9aead4c2 (このIDを非表示/違反報告)
ふみふゆ(プロフ) - 迷惑だったらすみません、雰囲気とか話し方とか、全然壊れてなくて好きです…… (2月6日 18時) (レス) @page12 id: aed784c8de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さき。 | 作成日時:2023年9月12日 23時