黎明と暁 _瑞希 ページ22
どうにも寝れなくて起き続けてしまった日の 窓から覗く美しい朝焼けと 夜の雰囲気を失くしてしまった部屋は、きゅっと胸を締め付けてくる。
眠れなかったことに対する罪悪感が喉を伝って落ちていく。睡眠が取れなくてぴりりと頭痛がして、それでも朝焼けは何も変わらなかった。
リビングからは 味噌汁を作っている匂いがして、外からは鳥の声がして、床は冷たくて、それら全てが何だか敵に思えて、布団にくるまる。
そういえば 瑞希の名字は暁山だったよなあとか まだぬるいままの布団の中で思う。
暁は 太陽が昇る前の仄暗いころを言うらしい。なら、今はもう完全に太陽が昇ってしまっているから、暁とは言えないなあ。
瑞希の目も髪も、暁のころよりよっぽど明るい色を持っている。黎明の名の方がぴったり来るような、シャイニーピンク色。
くるんと 上手に巻かれたサイドテールの感触を思い出す。サラサラでくるくるで、一本一本の髪が太い。しっかりした髪の毛。
太い髪の毛なのにサラサラなのすごいよな、と思いながら、自分の髪をいじった。手櫛では必ず絡まってしまう自分の髪が憎たらしい。
もそもそと布団から手を出して、スマホを取っては布団に潜り込む。
瑞希、起きてるかな。この時間じゃもう寝てるかな。寂しくて哀しくて死にたくなって、あの声が聴きたくなった。
トーク画面から通話ボタンを探して、押すだけだった。…押せなかった。迷惑かけちゃったら嫌だったから。
でも今は 自分のことしか考えられなくて、カタカタ震える手のまま電話をかけてしまった。
数コール鳴った後、起きていたのか、案外瑞希はすぐに電話に出た
「…もしもし、どうしたの? A。何か用事?」
『…瑞希、』
いつもどおりの瑞希の声に安心して、やけに声が震える。涙が出てくるのを止められなくて、うわ言のように瑞希の名前を呼んだ。
『瑞希、……瑞希ぃ… みずき…』
「…大丈夫だよ。ボクはちゃんといるからね」
頭を撫でられたことなんかないのに、撫でられてるみたいに感じて、あやしてくれる瑞希の声が何よりの救いに聞こえて、数分はそうしてしまっていた。黎明の時間だ。
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さき(プロフ) - ふみふゆさん» 迷惑だなんて、とんでもない!とっても嬉しいです!ありがとうございます…!! (2月6日 19時) (レス) id: bc9aead4c2 (このIDを非表示/違反報告)
ふみふゆ(プロフ) - 迷惑だったらすみません、雰囲気とか話し方とか、全然壊れてなくて好きです…… (2月6日 18時) (レス) @page12 id: aed784c8de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さき。 | 作成日時:2023年9月12日 23時