検索窓
今日:60 hit、昨日:42 hit、合計:4,192 hit

黎明と暁 _瑞希 ページ22

どうにも寝れなくて起き続けてしまった日の 窓から覗く美しい朝焼けと 夜の雰囲気を失くしてしまった部屋は、きゅっと胸を締め付けてくる。


眠れなかったことに対する罪悪感が喉を伝って落ちていく。睡眠が取れなくてぴりりと頭痛がして、それでも朝焼けは何も変わらなかった。




リビングからは 味噌汁を作っている匂いがして、外からは鳥の声がして、床は冷たくて、それら全てが何だか敵に思えて、布団にくるまる。


そういえば 瑞希の名字は暁山だったよなあとか まだぬるいままの布団の中で思う。

暁は 太陽が昇る前の仄暗いころを言うらしい。なら、今はもう完全に太陽が昇ってしまっているから、暁とは言えないなあ。



瑞希の目も髪も、暁のころよりよっぽど明るい色を持っている。黎明の名の方がぴったり来るような、シャイニーピンク色。


くるんと 上手に巻かれたサイドテールの感触を思い出す。サラサラでくるくるで、一本一本の髪が太い。しっかりした髪の毛。


太い髪の毛なのにサラサラなのすごいよな、と思いながら、自分の髪をいじった。手櫛では必ず絡まってしまう自分の髪が憎たらしい。





もそもそと布団から手を出して、スマホを取っては布団に潜り込む。


瑞希、起きてるかな。この時間じゃもう寝てるかな。寂しくて哀しくて死にたくなって、あの声が聴きたくなった。

トーク画面から通話ボタンを探して、押すだけだった。…押せなかった。迷惑かけちゃったら嫌だったから。



でも今は 自分のことしか考えられなくて、カタカタ震える手のまま電話をかけてしまった。




数コール鳴った後、起きていたのか、案外瑞希はすぐに電話に出た

「…もしもし、どうしたの? A。何か用事?」

『…瑞希、』



いつもどおりの瑞希の声に安心して、やけに声が震える。涙が出てくるのを止められなくて、うわ言のように瑞希の名前を呼んだ。


『瑞希、……瑞希ぃ… みずき…』

「…大丈夫だよ。ボクはちゃんといるからね」



頭を撫でられたことなんかないのに、撫でられてるみたいに感じて、あやしてくれる瑞希の声が何よりの救いに聞こえて、数分はそうしてしまっていた。黎明の時間だ。

寒がりのらくがき懐炉 _まふゆ→←星月夜の会話 _絵名



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (13 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
25人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

さき(プロフ) - ふみふゆさん» 迷惑だなんて、とんでもない!とっても嬉しいです!ありがとうございます…!! (2月6日 19時) (レス) id: bc9aead4c2 (このIDを非表示/違反報告)
ふみふゆ(プロフ) - 迷惑だったらすみません、雰囲気とか話し方とか、全然壊れてなくて好きです…… (2月6日 18時) (レス) @page12 id: aed784c8de (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:さき。 | 作成日時:2023年9月12日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。