𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟷𝟻𝟿 ページ10
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「君たち!早く乗りなよ」
オレが声のする方へ顔を向けると、そこに停まっていたのはRX-7のスポーツカー。その運転席の車窓から顔を覗かせていたのは、まさしくあの安室さんで。
「あ、安室さん……!?」
「事情は聞かないであげるとしよう。ただ、目的はあの会場……僕と一緒なんだろ?」
安室さんはさっきの風見さんの一件といい、何か知っているのかもしれない。なんとなくではあるが、この一連の騒動に公安も関係している気がする。
そう考えたオレは、彼の言葉に頷いて後部座席のドアを開けた。そしてオレたちがシートベルトをしたのを確認すると、車は反対方向に走り出した。安室さん曰く、まだ警察の手が行き届いてない裏道があるという。
「………ねぇ、安室さん。さっき、奥穂駅で風見さんたちに助けられたんだ。あれって安室さんの指示だったの?」
「ああ……
あの暗号、もし仮に組織のものだとしたらあまりにも単純すぎると思ったんだ。それに、犯行現場に証拠を残すなんてあり得ないだろ?……僕だって、だてに潜入捜査をやっていたわけじゃないしね」
安室さんの言葉に、やっぱりそうだったのかと心の中で息をついた。彼はかなり初めの方で罠だと疑っていたんだ。
「そ、それで教えてよ、安室さん!いったい何がおこってるの?」
「僕も詳しくはわからない……ただ、何者かが組織の情報を警察にリークしたそうだ。ついさっき上から通達が来てね。そこでこの事を知ったのさ」
「……えぇ!?それって…う、裏切ったってこと?組織の誰かが!」
つい食いつき気味にそう尋ねると、"さあ、そこまでは……"と安室さんは肩を竦めた。オレの予想に反し、彼にも情報が回っていないらしい。ということは公安も今の状況がはっきりわかっていないんだ。
確かにあの組織には構成員と称した潜入捜査官が何人かいた。それこそ安室さんや赤井さんだってそうだったし、CIAの玲奈さんだって。でも、彼らは皆その正体が発覚してしまって以降、組織から一旦手を引いている。だから、今は新たにFBIが潜入させた諜報員以外にはいないはず。ましてやその人物は幹部クラスではないから、組織の情報の全てを知り得る事は不可能。
ならば、一体誰なのか。
幹部クラス……いや、幹部の人間が流したとでもいうのか。残ったあのメンバーのうちの誰かが。だが、それはあまりにも無理がある。あの面々は並々ならぬ組織への忠誠心があるし、裏切りに近いことなんてするはずがない。
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年12月19日 0時