𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟷𝟻𝟽 ページ8
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このことを含め、私がこれまで工藤君に組織の詳細を話さなかったのは、彼が巻き込まれてしまうから。すぐに首を突っ込む彼のこと、考えなくとも先が見えてしまう。それに、私に関与した人間にも危害が及んでしまう。
彼には話さなかったことがたくさんある。組織の正体に始まり、半世紀前から進めているプロジェクトまで。
けれど、そんな組織がもしも今日で壊滅するのならば。
ここが組織の根城というのなら、恐らくこの建物のどこかに専用のコンピューターがある。そしてその中にはAPTX4869の完全なデータも。
そう確信すると、続けざまにふと彼の言った言葉が流れてきた。
"逃げるなよ灰原……自分の運命から…逃げるんじゃねーぞ"
彼は私とは違い、一番に望んでいるのは組織の壊滅。そしてその原因はまさしく私が関与した例の薬によるもの。もし今日、ここで本当に組織がなくなるとするのならば。私がするべきことはたった1つしかない。
決めたわ……
今までずっと組織からひたすら逃げてきた。
けれども、逃げ続けるのは今日で終わりにしようと。
「もう……逃げるのは止めにしようかしら」
「……え?どうしたの哀ちゃん」
「灰原さん、何かから逃げてるんですか?」
「悪いやつに追われてんのか?」
独り言が聞こえてしまったのか、子どもたちがこちらを見る。この最初で最後の大役は、私ひとりで背負わなければいけない。
それに、この子たちを巻き込むわけにもいかないし。
「いえ、大丈夫よ……
………それよりも、みんな。ちょっと耳を貸してちょうだい」
不思議そうに首を傾げる子どもたちに、私は1つだけ頼み事をした。
.𝚂𝚒𝚍𝚎 𝙴𝚗𝚍
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年12月19日 0時