𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟷𝟻𝟼 ページ7
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信じられるわけがないじゃない。工藤君があんなにしてまで辿り着けなかった組織の壊滅なんて。
組織の強大さ、そして凶悪さは誰よりも身に染みているつもり。私は同じく科学者だった両親の後釜として、例の組織の一員になった。その研究を引き継いだはいいものの、結局やらされたのは愚かしい代物の開発。さらにはその過程で唯一の姉を失ってしまった。
それがきっかけで裏切ったのだけれど、組織は執拗に追ってくる。今までの間、この状態で生きていられたのが奇跡だろう。更には、完全な解毒剤の開発に奮闘することもできたのだって。
ここで、私はピルケースを鞄から取り出した。
透明なケースから摘んだのは、白乾児の成分を使用した解毒剤。この未完成な解毒剤は、確かに元の姿に戻れるけれど飲み続けると耐性ができてしまう。徐々に持続時間は短くなり、最悪の場合は心身に影響が出る可能性も。しかも、これを飲む条件として発熱・風邪と似た症状でなければいけない。
つまり、安直に未完成の解毒剤を飲み続けることはできず、早いこと完全な解毒剤を作らなければ幼児化したままになる。
完全な解毒剤を作るには、APTX4869のデータが必要。それも、断片的ではなく全貌が知れるくらいの。
数ヶ月前……組織との接触の際、私はあの酒蔵でAPTX4869のデータをMOにコピーした。けれどもそこで唯一私の幼児化を視認した人間──ピスコが原因で酒蔵は家事に。あの場でツナギに入れそのまま焼失したと称したMOは、結局回収したはいいものの焼け焦げて全てのデータを読み込むことはできなかった。それに、コピーしたMOを組織以外のパソコンで読み込むことは、コンピューターウイルス・闇の男爵の仕掛けによって不可能に近いことを知った。つまり、今の状態では完全な解毒剤を作るのは難しい。
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年12月19日 0時