𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟷𝟻𝟺 ページ5
.𝙷𝚊𝚒𝚋𝚊𝚛𝚊 𝚜𝚒𝚍𝚎
ガヤガヤと人々でごった返している大広間。
私はAさんに連れられ、再びここへ戻ってきた。
「……哀ちゃん、具合大丈夫?」
「灰原さん、無理しないでくださいよ」
私の様子を案じて子どもたちが駆け寄ってくるけれど、それどころではなく。視線は未だに、蘭さんたちの方へ歩み寄る彼女に注がれていた。
どうして…どうして彼女は教えてくれないの……?
つい先ほど彼女と話した一件。今まで感じたことのない規模の組織の臭いを感じ、腰を抜かしてしまった私に彼女は宥めるように言った。"もうすぐ警察が来るから、だから動いてはダメ"と。恐らく……いや、絶対に彼女は知っている。今日ここで起こるであろうことを。それでもなぜか彼女は教えてくれなかった。
そして今、少し向こうから聞こえた"爆発"の言葉。私にしか聞こえなかったのか、周りの子どもたちはお構い無しにはしゃいでいる。けれども彼女から告られた一言に蘭さんたちは酷く驚いている様子だし、やっぱりこの状況は只事ではない。彼女は私たちに隠して何かを企てているようだ。
少なからず、組織がこのパーティーに深く関わっているのは察しがつく。先ほどの気配や禍々しいここの雰囲気がその証。
とりあえず、彼に連絡をするべきかしら……
組織のこと、パーティーのこと、そして爆発のこと……例の彼に知らせようかと、鞄から携帯電話を取り出して電源を入れる。すると待ち受け画面とともに表示されたのは、切羽詰まったようなその彼からのメッセージで。
《無事か灰原!?》《今、そっちに行ってっから!》
……あの探偵さんは何か勘づいたらしい。
彼は用事があるといってこのパーティーへ来なかった。前日コソコソとしていたようだし、もしかしたら彼もまた隠れて何かをしていたのかも。今はそれどころじゃないから、言及するのは止めるけれど。
427人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年12月19日 0時