𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟷𝟻𝟹 ページ4
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それから少しして、私は未だこわばったままの哀ちゃんを連れて会場へ戻った。
時計を確認すると、時刻はちょうど午後7時10分。ことを伝えるにはちょうど良い時間。私は近くで談笑をしていた園子ちゃんたちの肩を軽く叩いた。
「……園子ちゃん、蘭ちゃん。ちょっといい?」
準備はほぼ整った。あとは彼女たちに伝えるだけ。
「2人とも……今から言うこと、落ち着いて聞いてくれる?」
きょとんとした表情で、"どうしたんですか?"と聞く2人。やっぱり、このパーティーを楽しみにしていた2人や子どもたちには申し訳ないことをしてしまったと思う。
「あと10分したら、子どもを含めて皆を外に避難させてほしいの」
「えっ……ひ、避難?それまたどうして……」
状況を知らない彼女たちに、静かにそしてなるべく衝撃を与えないように口を開く。
「──ここ、あと20分後に爆発するの」
「「……!?ば、ばくは──!!」」
叫びそうになる2人の口を咄嗟に塞ぐ。誰かに聞かれたら大変だ。これは極秘扱いなのに。蘭ちゃんたちは口をパクパクとしていたが"す、すみません……!"と慌てた様子で口を抑えた。
「……ちなみに、ほかの来場者については気にしないで。事前に警察から連絡がいってるはずだから」
計画では、7時20分になったら一斉に会場から全員退避する。おそらくこの膨大な人数だ。一緒に動けば、その足を止めることなんて誰もできない。そして、外に出れば待機している警察に保護される算段だ。
「と、とりあえずはわかりました……
でも、Aさんは……Aさんは、どうするんですか?」
「私は、これからどうしてもやらなきゃいけないことがあるの。でも、大丈夫だから気にしないで」
誰にも言ってないけれど、私がこれからしなければいけないのは爆破処理。この会場には3つの爆発物が仕掛けられている。1発目の小規模な爆発物はどうしても場所がわからなかったのだが、残りの2つは大規模なものときいた。おそらくこの2つが作動すると、ここの建物ごと吹っ飛ぶだろうと。もしそうなったら今まで練っていた計画が散ってしまう。
そこで私は確認のため、先ほど来た新着メールを確認した。
1階のホール横と螺旋階段の裏……
その内容は爆発物の場所と解除方法。種類は2つとも時限爆弾だという。仕組みさえ分かれば解除は難しくはない。私は爆発物処理班ではないけど、解除方法を見ればきっとできると願い出たのだ。
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年12月19日 0時