𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟷𝟻𝟷 ページ2
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警察、という単語で哀ちゃんを落ち着かせようとすると、反対に彼女は私の言葉に酷く驚いているようだった。
「あ、あなたまさか、このパーティーがどんなのか知って……!」
……でも、私はその答えを言うことができない。
この会場の裏で起こっていることも、影の暗躍者の存在も。その代わりにできることといえば、ただ目の前で震える彼女を抱き締めることぐらいしかなくて。バクバクとドレス越しに彼女の激しい心拍が伝わり、いま大きなパニックに陥っていることがすぐにわかった。
それでも、申し訳ないけれど私にはこの言葉しかかけられない。
「大丈夫、今日で全部終わるはずだから。もう哀ちゃんが彼らから逃げ続ける日も、怯える日もなくなるの。だから……」
「全部、終わる……?あなた、何を言って………」
本当は全てを話したい。真実を話して安心させてあげたい。
でも、私は彼女に言うことが出来ない。この計画は極秘に取り扱うのが約束だから。
「………まさか。まさか、組織のことなの……!?ねぇお願い、一体どうなっているのか教えてちょうだい!」
"あなたは私の協力者でしょう?"と確認するようにせがむ哀ちゃんの姿に、自責の念に駆られてしまう。彼女は恐らく何かを感じ取っている。珍しく声を荒げる様子からそう感じた。
「本当にごめんね……もうそれ以上は詳しくは言えないの」
「!ど、どうして………」
私がそう謝ると、もうこれ以上話してはもらえないと踏んだのか。次第に彼女の心拍が一定のリズムになり、彼女が落ち着いたのだとわかった。体の震えはまだあるけれど、蒼白した顔の色は徐々に赤みを取り戻していって。
そして再び彼女と視線を合わせると"そういえば……"と、哀ちゃんは言葉を零した。
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年12月19日 0時