𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟷𝟶𝟽 ページ8
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その翌日、私は陣と一緒に"とある場所"を訪れた。
おそらくこの日は私史上最も緊迫し、プレッシャーを感じた1日だったと思う。できればもう二度と体験したくはない。
………本当にこれでよかったのかしら
その場所からの帰り道、私は隣にいる彼とは違ってこの答えに自信が持てないでいた。新一くんたちに対し少し後ろめたさを感じ、無意識に額に手を当ててしまう。
でも、ある意味これは私が目指していたゴール。
これでいいのかもしれない。ただ、思うところがあるだけで。
───そしてその数日後、すっかり体調が回復した彼はアパートを去っていったのである。
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それから約2週間後……ちょうど私の怪我もほぼ完治してきた頃。
足を痛めてからポアロに長期期間のお休みを頂いていた私は、部屋で1人窓の外を眺めていた。
大したことのない怪我ということもあり本当はすぐに出勤するつもりだったが、強制的にマスターから止められてしまったのだ。安室さんもいないなか、快くお店を引き受けてくれた梓さんには頭が上がらない。ちょうど明日から復帰できるしまた頑張ろう。
「……今日はいいお天気だし、布団でも干そっと」
よく晴れた秋天の空にそう呟いてシーツに手をかけた時、サイドテーブルに置いていた携帯がピロリンと音を立てて震えた。誰かからメールが来たみたいだ。
誰だろう………って珍しい、哀ちゃんからね
メールボックスに溜まっていた新着のメールは、彼女からのもの。気になるその内容は、"会って話したい"というもので。
《From:哀ちゃん
To:自分
急にごめんなさいね。今から博士の家に来れるかしら?ちょっと話したいことがあるの》
哀ちゃんが話したいことって何だろう。そもそも彼女自体、会うのは久しぶりな気がする。
私は机の上に立てかけたカレンダーを見て、1つ大きく頷いた。
「今日は何もないから行けそうね」
せっかくだけど布団を干すのはまた今度にしよう。
私はすぐ彼女に了承のメールを送り、外出をする準備を始めた。
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年12月9日 22時