𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟷𝟺𝟾 ページ49
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これまた広い駐車場に車を停めて降りると、すでに外はたくさんの人々でごったがえしていた。やはり富豪が集まっているからか、駐車場が全て高級車で埋まっている。なかなかお目にかかれない光景だ。
そしてその中には、混ざるように見慣れた黄色いビートルが。そこからバタンと後部座席のドアを開けておりてきたのは子どもたちで、彼らに気付くと園子ちゃんは声をかけた。
「……あ!あんたたち、ちょうど来たのね!」
そして私たちの姿を見つけるなり、"お姉さ〜ん"と言って駆け寄ってくる子どもたち。みんなよそ行きの衣装に身を包み、いつもよりどこか大人っぽい雰囲気だ。
「君たち、くれぐれも迷惑はかけんようにな」
「「「はーい!」」」
送りに来た阿笠さんは、"子どもたちの事は頼みます"と挨拶をして再びビートルを走らせていった。
みんなとても楽しみにしていたらしく、周りに集う資産家や目の前の豪邸を前にはしゃいでいる。その中にはやはりコナンくんはおらず、今ごろ奥穂駅で組織の人間と対峙している最中なのかもしれない。それか、何かに勘づきこちらへ向かってきているのかも。
ごめんね………でも、許してちょうだい。新一くん
絶対に届かないと知りながらも、私はつい心の内で言葉を零した。
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それから、私はみんなで少し立ち話をして会場に入った。
私たちを最初に出迎えてくれたロビーは、内装のスケールがあまりにも大きなもので。所々にある金銀細工の飾り物。そして壁にかかる有名な巨匠の絵画の数々。目に映るひとつひとつの物がとても高価なものに見える。おそらく、このロビーだけで億はするだろう。あの園子ちゃんも関心しているくらいなんだから、間違いはない。
そして私はぐるりと内装を見渡しながら、受付で女の人に招待状を見せた。
「……拝見いたしました」
"どうぞ"と会場へ入るよう促されて横を通り過ぎようとしたとき、その女の人から手首をキュッと軽く掴まれた。
"早く逃げなさい、ここから"
囁くような小さな声で、けれどもたしかにそう言われた。
振り返って見れば、女の人は何も無かったかのように次の人の招待状を確認していて。彼女もまた、ここで起きる惨劇を知っているのだろうか。
ごめんなさい……それはできないの
せっかくの忠告に心の中で謝りを入れる。
私は彼女に軽く会釈をすると、ホールへ足を踏み入れた。
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年12月9日 22時