𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟷𝟺𝟽 ページ48
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パーティー当日の24日。
冬の重い冷気が立ち込めたこの日は、いつもより夜空が暗闇に包まれていた。雨は降っていないというのに、分厚い雲が被さり星たちは姿を消してしまって。
きっとこの空の様子にどこか不安を感じるのは私の気の所為じゃない。実際に今日、例の計画が実行されるのだから。
「うっわー……大きいわね!これ、別荘ってもんじゃないわよ」
園子ちゃんが車窓に手をあてて外を覗き見る。
彼女の言葉通り、私たちの乗る車のすぐ横には一棟の建物が建っていて。蘭ちゃんもその様子に心を躍らせているようだった。
そんな私たちは、園子ちゃんの車に乗って例の会場まで移動していた。毛利さんたちとは向こうで合流するらしい。
パーティーの開催場所であるこの別荘は、米花町から遠く離れた森林の中に位置していた。マップにもその建物の表示がないのは、きっと最近につくられたからかもしれない。はたまた誰も知らなかったからか。そんな色彩の無い森の中にある別荘は8階建て。広大な敷地ではあるが、まるで世間の目から隠れるようにひっそりと建っていた。
「ほんと!なんだか小さな高級ホテルみたいね〜」
「多分、ハワイの別荘よりもすごいわよ!」
余念なく喋りあう2人の隣で、私は複雑な気持ちを抱えていた。不安な気持ちにそして渦巻く焦り。
「……あら。Aさん、どうかしましたか?」
「え?あ、ううん。大丈夫よ、気にしないで」
ボーッと一点を見つめていると、蘭ちゃんが不思議そうな顔をしていた。
だって今日は……いや、今日で……
改めて、今日自分がやらなければいけないことを思い出す。こんなにも楽しそうな彼女たちの姿に、次第に罪悪感に近い感情が湧くが致し方ない。私は自分に課せられた試練……いや、任務を全うしなければいけないのだから。
徐々に会場へ近づく車の揺れに合わせるように、私の心の中は始終不安定だった。
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年12月9日 22時