𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟷𝟺𝟼 ページ47
.
「このダイイングメッセージは、パーティーの主催者の正体を暗示していたんだ。被害者は、最後のあがきでダイイングメッセージを通してオレたちに真実を伝えたかったのさ」
正体?と首をかしげる服部に、本題のあの奇妙な名前に隠された意味を説明する。
「"𠄌代 実凛"……被害者がダイイングメッセージで伝えたかったのは、この名前のウ冠に濁点をつけるってこと。それで、あとは部首の部分だけをカタカナに直して読むと、とある文字が浮かび上がる」
一通り手順を解説しながら手帳にペンを走らせる。
𠄌は"レ"、代 は"イ"、実は濁点がついてるから"ヴ"、そして凛は"ン"。
そして最後にこれを繋げて読めば……
「"レイヴン"、つまりこれは英語の"Raven"……日本語でいうとワタリガラス。そして別名は"大烏"。
それは普通の
───そう、カラスの大ボスみたいな奴さ!」
ここまでくればピンと来たのか、"おいおい、まさかそれは……!"と服部が息を呑む。
オレももっと早くに気づいていればと何度も後悔する。
あの被害者はずっとパーティー会場に組織がいて、さらにはそのボスが関与しているということを伝えてたんだから。だというのにオレはあのダイイングメッセージより、すっかり組織が残した暗号に夢中になっていた。
つまりあの暗号の本当の役割は、わざとオレたちの意識をパーティーに向かせないようにしてたんだ。
「ああ……そうさ!
あのパーティー会場こそ、組織のねじろだったんだ!」
ドン、と勢いよく座席から立ち上がる。電車内だからか周りの視線が痛いが、今は気にしている暇なんてなかった。
あの会場には、すでに蘭をはじめとした様々な人が集まっているはず。組織があの会場で何をしでかすかはわからない。一足遅れたスタートに、心が掻きむしられるような大きな焦燥に駆られた。
くそっ……まだ着くまで15分もかかるのか!
電車の揺れがこんなにも焦らされると感じたことはなかった。携帯の時間を確認すれば、会場の最寄り駅まではまだ時間がある。
急ごうにも急げない今のオレには、ただただ"みんなが無事でいてくれ……!"という願いしかできなかった。
.𝚂𝚒𝚍𝚎 𝙴𝚗𝚍
181人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年12月9日 22時