𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟷𝟺𝟻 ページ46
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「まずいぞ服部っ！！皆が危ねぇ！」
「………は？ちょ、工藤なにいうて──」
公安から事情を聞かれている服部を無理やり引き離す。
ジョディ先生が引き止める声も聞こえたけど、今はそれどころではない。
最悪の事態だ。今までで最も避けたかった、最悪の。
オレは服部を連れて改札を駆け下り、停車していた電車に乗り込んだ。
「おい、どないした工藤！そんな急に慌てよって……」
「……なぁ、服部。今日の資産家パーティーって、和葉ちゃんも来るんだよな」
「ん？あ、ああ。蘭ちゃんたちと会うゆーて楽しみにしとったぞ」
──やっぱりか。服部にとってもこの真実は他人事じゃない。
これから先のことを危惧するオレとは対に、何の事情も知らない服部は急に電車内に連れ込まれて不服そうだった。
「それより、なんなんや！急に電車乗り出したりしよって。いったいどこ行くきなんや」
「行くも何も、そのパーティー会場さ。
………危ねーかも…いや、危ねぇんだよ。皆が」
自分で思っているよりも低い声が出た。
その様子にただごとじゃないと気づいた服部は、"オイ、それってどういう……"とオレの肩を揺らす。
オレは服部にこの複雑な話をうまく伝えるため、1ヶ月前の出来事から思い出させることにした。
「……なぁ、あのショッピングモールで撃たれた被害者のこと覚えてるか？」
「あ？ああ……あの財閥の会長さんやろ？」
「そう、被害者は裏社会の人間と関わりがあった。そして今日のパーティーにも参加する予定だった」
つまりはこうだ。 被害者である財閥の会長は、裏社会──あの組織との金銭面での関係を持っていた。ところが最近になってその金銭問題が世間に露呈。そして、組織にとって目の上の瘤として消されてしまったのだ。
「……しかし、裏金疑惑が発覚してしまい会長は抹殺されてしまった。だから、死ぬ間際にあるダイイングメッセージを残した」
そこでいったん話を止め、オレは服部にあの手帳に記した《うﾞ》の文字を見せる。被害者が息も絶え絶えに伝えたかったこと。それはまさにこの一文字だったんだ。
「今更だけど、これが何を示しているのか分かったんだ」
そして、オレはポケットから例の招待状を取り出した。
𠄌代 実凛……なぜ主催者がこんな奇妙な名前なのかが今になってわかった。父さんとの電話で、オレはようやく全てを理解したのだ。
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作者名：匿名希望
| 作成日時：2023年12月9日 22時
