𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟷𝟶𝟺 ページ5
.𝙶𝚒𝚗 𝚂𝚒𝚍𝚎
「もう俺に関わるんじゃねぇ」
目の前の女にそう言い放ってやれば清々した。
今回、この女のせいで再び面倒事に巻き込まれてしまった。奴は俺にかなり衝撃を受けているようだが、知ったこっちゃない。もっと早くに告げておけばよかったと後悔する。
呑気に帰ってきた奴を組み敷くのはいとも容易いものだった。立ち去ろうとした際に、この女から引き倒されたのは予想外だったが。
奴は"迷惑をかけないから関係を断つな"と懇願している様子だが、そういう問題ではない。この女は厄介事を引き起こす種。やはり、さっさと関係を断っておけばよかった。
ガキの頃から絡んでくるコイツは、自ら寿命を縮めてまで何を求めているのか。死にたがりではないはずだ。俺にはこの女の思惑が全くわからない。
「……なぜそこまでして俺に関わろうとする。碌な目に合っちゃいねぇだろ」
そう尋ねれば、奴はゴニョゴニョと吃りだす。俯き、やや頬を染め、かと思えば青ざめさせてと相変わらず忙しい奴だ。言いたい事があるならはっきり言え。どうせ今宵で最後、一句ぐらいは聞いてやる。
───と、思っていたのだが。
「そ、それはっ……私が、陣のことが好きだから!小さい頃からずっと……!」
その言葉に、一瞬だが思考が停止した。
別に驚いたわけではない。この女が自分に気があるのは昔から勘づいていた。ただ、言葉に出していなかっただけで。まさかこのタイミングで言ってくるとは思わなかったが。
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年12月9日 22時