𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟷𝟹𝟸 ページ33
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それから蘭ちゃんと園子ちゃんは、しばらくドレスを選びながら恋バナに花を咲かせていた。
そんな楽しそうに話す2人を微笑ましく見ていると、"そういえば……"と蘭ちゃんが何か思い出したように私の方へ向き直った。
「……Aさんって、彼氏さんとかいるんですか?あまりそういう話を聞かないので」
急に話を振られてドキッとする。しかも恋愛の。
すると園子ちゃんも便乗して一気に注目が私に向いた。
「そういえばそうねぇ……いっつも私たちの恋バナばかり聞いてもらっちゃってたもの!」
じーっと2人から期待のこめられた眼差しで見つめられる。なんだ、いったいなにを期待されているんだ。私の色恋沙汰なんてたいして面白くないのに。
「えー、えっとね、それは……」
何か言おうとするも言葉が詰まる。
というのもあの日──私が陣に想いを伝え、彼も同じ気持ちであったと発覚した日は、その先に何の進展もなかったからだ。告白したからといって付き合うわけでもなく、ただ両者の気持ちを確認しただけ。友達以上恋人未満でもなければ、その逆でもない。
つまり、私たちの関係に名前はない。
というより、あの日はそれどころではなかったのだ。
「……う〜ん、今はいないかな」
苦し紛れにそう言えば、目の前の2人は意外だとでも言うように詰め寄ってきた。そして、"今回のパーティーでいい人が見つかるかも!"と園子ちゃんに励まされてしまった。
なんだか変な解釈を持たれてしまったようだけど、とりあえずこれでいいとしよう。誤解を解くのはとうぶん後になりそうだし。
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年12月9日 22時