𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟷𝟸𝟹 ページ24
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「……まぁ、本当は結構初めの方でそうじゃないかと思ってましたけどね」
「は、初めのほうで?」
「ええ。よくポアロに宅配便が届いた時、Aさん印鑑を押してくれてましたよね?あの時、Aさんが印鑑を《印》の上ではなく受取人の名前の後ろに押してるのを見て気づいたんです。あれは司法や契約書の書類でよく見る警官の押し方。それでもしかして……と思ったまでです」
「………!すごい、安室さん。まるで本物の探偵みたいですね!」
彼の洞察力に関心して思わず拍手を送る。思えば、確かに私は押印をするときについ癖がでてしまっていた。
ところで、そんな安室さんの配属先はどこだったんだろう。私は捜査一課だったけど、刑事警察の中では彼の名前は聞いたことも見たこともなかった様な。そもそも警視庁にいただろうか。
「あの、安室さんってどこの部署にいたんですか?たぶん私、警視庁の中でお会いしたことないと思うんです」
その問いかけに、一瞬安室さんがピタリと固まった気がした。まるで、予想外のことを聞かれたとでも言うように。
けれども彼はしばらく考えるような仕草をした後、少しのあいだ閉ざしていた口をゆっくりと開いた。
「……あぁ、それはですね。僕が───」
──しかし、その続きを聞くことはできなかった。
なぜならば、唐突にダンッという鈍い衝撃音が店外から鳴り響いたからだ。それは発砲音のような……そう、それこそこのショッピングモールには似つかわしくない銃声のような音が。
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年12月9日 22時