𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟷𝟸𝟸 ページ23
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「──で、今までポアロに行けてなかった理由ですが、実は本業の方がずっと忙しかったんです」
喫茶店でパフェを注文待ちしている間、安室さんは自らそう切り出した。
「本業ですか……」
確かに安室さんは私とは違い正社員ではなくアルバイター。そういえば彼の本職が何かなんて、話したこともなければ聞いたこともなかった。私より長くいるはずの梓さんも知らないようだったし。
「あの、失礼ですけどその本職っていうのは……」
「……………それはあなたと同じですよ」
「えっ、喫茶店の店員ってことですか?」
そう聞き返すと、いやいや……と首を振られる。
「僕が言いたいのは、"あなたの前職と"っていう意味です」
前職……私がポアロで働く前の職業なんて。そんなの、1つしかない。
でも、安室さんがまさか……
ぽっと頭に浮かんだ考えに、間違いだろうという思いを込めて私は聞き返した。
「そ、それってもしかして……"警察"、ですか……?」
おずおずと私が言った言葉に、安室さんはただ微笑みを浮かべるだけだった。……これはつまり、そういうことなんだろう。
えっ……安室さんが、警察…官……!?
私は2つの意味で驚かされた。それは安室さんが警察であることと、彼が私もまた警察であったのを知っていたこと。特に私に関しては、マスターにも梓さんにも話したことがないはずなのに。
「………というより、知ってたんですね。私が警察官だったって」
「ええ、これはずいぶん前の話なんですが…………そうですね、僕がまだ警察学校に在学していたころです。
試射訓練をしていたときに、当時の教官が言っていたんです。"かつて最初の試射で満点をとった婦警がいた"と。……そして、つい最近この事を思い出してその婦警を調べたら、あなたが浮上したというわけです」
"まさかその婦警があなただと知った時は驚きましたが……"と安室さんが目を伏せるが逆もまた然り。あの射撃訓練がそんなに語り継がれるようなものだと思わず、私もびっくりしてしまった。
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年12月9日 22時