𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟷𝟷𝟷 ページ12
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ところで、どうして哀ちゃんはこんな重要なことを話してくれたんだろう。
コナンくんの協力者とはいえ第3者目線、私は中間的な立ち位置。彼女の恐れる組織にも関係があり、新一くんの協力者でもある。もちろんそんな気は無いけれど、傍から見れば寝返る可能性もあるように見えるはずだ。
「でも、こんな大切なことどうして私なんかに……ほら、哀ちゃんも知ってるでしょう?私が組織の人間と少なからず関わりがあるって」
「……ええ、それは知ってるわ。今日私がこの事を伝えたのは、工藤君があなたに正体をカミングアウトしたっていうのもあるけど……何より、あなたからは姉の面影を感じるの」
"あなたが私に言ってくれたこと、覚えてるのよ"と彼女は目を細めた。そして"姉"という単語に、私はふと数ヶ月前のことを思い出した。
"私と哀ちゃんは、年齢けっこう離れてるけど大きなお姉ちゃんって思ってくれたら嬉しいな"
ずっと前に哀ちゃんとショッピングモールへ行った時、私は彼女にそう声をかけた気がする。あれは確か、彼女があまりにも寂しそうな顔をしていたから。まさか彼女の家族関係がこんなに複雑なものとは思わなかったけれど。
あの時の私は記憶喪失で素性の知れない人物の存在だったのに、そんな私の言葉を覚えてくれていたなんて。
「信頼しているの、あなたのこと。初めて会った時から組織の気配を感じなかったし、今まであんな風に言われたこともなかったから」
そう言った彼女の顔は少し照れくさそうで。そしてスッと右手を私の前に差し出した。
「……だから、工藤君だけじゃなくて私の協力者にもなってくれないかしら?あなたに相談したいこととかもあるかもしれないわ」
「うん、まさかそう思ってくれていたなんて……。ありがとう……哀ちゃん。もちろんよ」
普段クールな彼女からそう言われるとこみ上げてくるものがある。私でよければ力になりたいし、協力したい。
彼女の右手をぎゅっと握ると"Aさん、ありがとう"と哀ちゃんが微笑んだ。
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年12月9日 22時