𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟷𝟶𝟷 ページ2
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「そ、それはっ……私が、陣のことが好きだから!小さい頃からずっと……!」
静まり返る室内に響く私の言葉。
覚悟を決めると、一思いに目の前の彼にそう告げてやった。
それは、長らく溜めに溜めていた言葉をついに解放した瞬間だった。31年もの間、どうして私は"好き"の2文字が言えなかったんだろう。ずっと初恋をだらだらと引きずって。
1度本心をさらけ出してしまえば、勢いがついて言葉は止まらなかった。
「私だって……犯罪者のことを好きだなんて自分でもおかしいって思ってる。でも、ずっと……ずっと好きだったから警察になってまで助けたかったの」
"あなたを、裏の世界から"
その声はやや震えてしまった。緊張からか、はたまた心の内を曝け出したことによる安堵か。どちらかはわからないけれど、自然と涙混じりになってしまって。
こんな至近距離にいるというのに、窓から差し込む月明かりの逆光で、彼が今どんな表情をしているのかなんて分からない。戸惑っているかもしれないし、迷惑がっているかもしれない。
「だから、その………もう関わるななんて言わないで。本当に、お願いだから………」
最後に上ずった声でそう懇願した。
もしこれだけ言っても拒否されたら、私はどうすればいいんだろう。この関係に終止符を打たなければいけないのか。彼とは今後一切の関わりを絶ち、赤の他人同士として生きていけるのか。わからない、今後どうすればいいのかなんて。
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年12月9日 22時