𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟷𝟶𝟶 ページ1
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「め、迷惑なんてかけないから、もう関わるななんて言わないで……!」
先ほど彼は調子が狂うと言っていた。
きっと、私は自分が思っている以上に迷惑をかけてしまっていたんだ。それならもう変に首は突っ込まないと約束する。だから、そんなことを言わないでほしい。突き放さないでほしい。
彼はそんな懇願をする私に、相変わらず冷ややかな視線を送っていて。
「……なぜそこまでして俺に関わろうとする。碌な目に合っちゃいねぇだろ」
そう尋ねる彼からはやや苛立ちも垣間見える。私のこの様子を見て、理解し難いと言いたげに。
私が彼に関わりたい……いや、彼を放っておけない理由。
そんなの決まっている。この人が好きだからだ。
子どもの頃から、恐らく初めて出会ったあの日から。言葉遣いは悪いし、人相も悪いし、もう犯罪に手を染めてるけど私はそんな彼がずっと好きなのだ。だからこそ、この幼馴染みを裏の世界から救いたい。
何年も何十年も胸の奥に秘めていたこの想いを、ついに伝える時が来たのかもしれない。
「それは……わ、私が……」
吃る私に、あの日の記憶が蘇る。彼が施設を去る前夜、私は言えなかった。彼のことが好きだったと。喉まで出かかっていたというのに、変な気遣いと躊躇のせいで。でも、今こそ伝えなければいけない。今度こそいなくなってしまうだろうから。
「そ、それは……」
「おい、言いたい事があるならさっさと言え」
早くしろと言わんばかりに冷たく言われる。
告白なんて初めてだ。胃がぐるぐると回ってきて、気分が悪くなる。そしてなにより怖い。彼に拒絶されるんじゃないかと。
で、でも言わなきゃ……!
不安と緊張でしばらく口篭っていたが、私はついに覚悟を決めた。
今からこの人に伝える。長年、蓄積していたこの想いを。
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年12月9日 22時