𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟺𝟾 ページ49
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私たちが部屋を出ると、それにシンクロするかのように開くすぐ隣の部屋。
どうやら隣の部屋には蛇塚さんがいたらしく、彼は煙草を咥えながら携帯電話を耳に当てていた。そして通話が終わったのか私の方を見て、"あぁどうも……"と軽く会釈を交わした。
「ねぇ、おじさん!今なんの話をしてたの?」
「……ん?あ、あぁ、山下に今後の予定を……」
電話の内容に興味が湧いたらしいコナンくんが躊躇なく尋ねたちょうどその時。
まるでその続きを遮るかのように、先程まで耳にしていた甲高い声が聞こえたのだ。
『……な、なんでここにいるの!?来ないで、ねぇ来ないで!いやぁぁぁぁー!!』
すぐ近くの部屋からの声に、パッと私たちは顔を見合わせる。
その声のした方はすぐ隣──今しがた訪れていたあの小部屋。今そこにいるのは犬山さん1人だけのはず。でも今の叫び声は尋常ではない。まさに助けを乞うものだ。
「……なんだ?い、今の声、犬山のじゃないか……!」
青ざめた形相の蛇塚さんの言葉にハッとして、私は急いで隣の部屋に駆け寄った。ところが、私たちが出てすぐに鍵をかけてしまったらしく、ドアノブをいくら回しても聞こえるのはガチャガチャとした金属音のみ。
「い、犬山さん!?大丈夫ですか!」
室内へ呼びかけてみても応答は一切無し。
なんだか良くない光景が脳裏によぎり、背中にツーっと冷や汗が伝った。
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年7月29日 16時