𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟺𝟶 ページ41
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「……まぁ、その割にはいわくつきってか、事件が多いのよね」
膝に肘を着いて園子ちゃんがそう言う。聞き捨てならないその内容に、隣に座っているコナンくんもウンウンと頷いている。
テーマパークにそぐわない一言に、事件?と聞き返すと、園子ちゃんはアイスクリームを頬張りながら教えてくれた。
「ええ……あそこのジェットコースターで数ヶ月前に殺人事件があったり、目の前の噴水広場では蘭とガキんちょがナイフで刺されそうになったり……あぁ、そういえばその時、Aさんと同じで蘭も記憶喪失になっちゃって大変だったんですよ!」
「ねー、その時はボクもびっくりしちゃったよ」
2人の会話に、"も〜言わないでよ園子、コナンくん!"と蘭ちゃんが眉を下げる。
え、ええぇ………遊園地でそんなことがあったの?
前言撤回。どうやらここは綺麗だけでは済まされないみたい。米花町に負けず劣らずの内容にびっくりだ。
「それはなんて言うか……災難ね。こんなに素敵なアトラクションが多いのに。今の観覧車なんて初めて乗ったよ」
「え!Aさん、今まで遊園地とか行ったことないんですか?」
「うん、でも機会に恵まれなかっただけよ。それに、今更大の大人が1人で観覧車とかジェットコースターとかって、なんだかもの悲しいっていうか……」
社会に出てしまえば、中々外で遊ぶ余裕もない。元々、職場以外の友人の幅も広い方ではないので尚更。私が苦笑いを浮かべると、"じゃあまた一緒に行きましょ!"と蘭ちゃんが温かい言葉をかけてくれた。
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「………あ!もうそろそろいい時間ね」
ふいに携帯に表示された時刻を見て、園子ちゃんがベンチから腰を上げる。また別のアトラクションに行くのかと思えば、これから劇場に移動するらしい。
でも、今はお昼ちょっと過ぎ。ショーが始まるまではあと1時間もある。私と同じ考えだったのか、あれ?と蘭ちゃんが首を傾げた。
「え?園子、まだショーが始まる時間じゃないけど……」
「……じ、つ、は!特別にバックステージにお邪魔できることになってるの。パフォーマーの皆さんと、少しだけどお話もできるのよ」
園子ちゃんが自慢げに腰に手を当てる。
なんと、国際的スターと直接話ができるらしい。園子ちゃんのお父さんが顔見知りということもあり、特別に関係者以外立ち入り禁止の舞台裏に足を踏み入れられるのだと。
そんな貴重な機会に、私たちはわぁ〜っと目を輝かせた。
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年7月29日 16時